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揚琴、オカリナ & インディアンフルート奏者がつづるいろいろばなし。
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#383 音楽の缶詰

 前便で、自分の演奏をレコードにするとき、モノラルでしか録音しようとしなかったチェリストのことを書いた。が、それはこの人のレコードは音質が悪いということではけっしてない。むしろ逆で、素晴らしい音質で録れていて「チェロの中にマイクを差し入れて録ったのではないか」と言われたほどだった。

 それほどの技術がありながら、将来の録音技術の進歩の果てに見える音楽の幻影化を危惧し、テクノロジーと生きた音楽との関係にモノラル録音しかしないという明確な一線を引き続けたこのチェリストの先見の明と明晰な決断を、ワタシは尊敬する。

 尊敬はするが、自分もそうするかと言えばそうはしていない。楽器をさわり始め、録音の真似事を始めた当初から、もっと「いい音」で、もっと「臨場感のある音」で録れないかと考えつづけ、その過程を楽しんできた。そうした思いは、ステレオ録音とデジタル録音、そして多重録音のテクノロジーによって支えられてきた。

 ステレオ録音された音楽を初めてヘッドホンで聴いたときの衝撃と感動は、今もはっきりと憶えている。それは中学生の頃、あるデパートの家電製品売り場でのことだった。ワタシはその豊かで広がりがあるサウンドに酔いしれ、ウチにあった「テープレコーダー」をおもちゃのようなオーディオにつないで、配線や音量調節をあれこれと工夫して、少しでもそのサウンドに近づけようと夢中になっていった。

 それから五年ほど後だったか、CDというものがこの世に現われた。レコードに針を落とし曲が始まるまでのあの独特のノイズや、カセットテープを回し始めたときのシーッというノイズは何もなく、スイッチを押すといきなりど〜んと曲が始まることにまず驚いた。音質はまだまだ荒いものの、ノイズがまったくないクリアーな音を実感した。が、ワタシはあることを考え始めた。
「CDの音は限りなく良くなっていくにちがいない。では、その行き着く先には何が待っているのだろうや」

 どんなに技術が向上しても、どんなにノイズをカットしても、原音そのものに到達することはあり得ない。何より、目の前の演奏者が奏でる本物の楽器から発せられる音と、スピーカーから流れてくる音とでは、音の広がり方が決定的に異なる。音の広がり方のちがいとはすなわち、生きた音であるか死んだ音であるかのちがいなのだ。
 限界を忘れた技術開発は人を誤った方向に導いてしまう。

 オーディオの音は、どこまで行っても音楽の「影」なのだ。そしてオーディオのテクノロジーの向上に心酔する人々は、利便性という甘いワナに掛かってしまっている。

 もうひとつ重要なことは、CDは録音した音楽を半永久的に保存できるということだ。しかも大量生産できる。このことが、音楽そのものの価値をどんどん下げていっている。人々は影を本物だと信じ始めてしまう。CDを手にしたワタシは思った。
「これは音楽のカンヅメだ」

 音楽の缶詰を食べることに慣れてしまったわれわれ。缶詰を伴奏にして演奏するわれわれ。缶詰は便利で有用なものだが、ミネラル=微量栄養素を欠き、廃棄にたいへんなエネルギーとコストがかかるものだということを、われわれは忘れてはならないと思う。
 で、きょうも缶詰製作作業に追われつづけ、楽しんでもいるという悲しい定め。

 モノラル録音しかしなかったあのチェリストは、今は天国で天上の音楽を奏でつづけているそうだ。が、その音は次第に地上に届きにくくなってきているとさ。

 おしまい。 
09.02.01 記 

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演奏活動歴/揚琴、27年。オカリナ、16年。
活動範囲/全国の都心から山間地まで。
演奏場所/ホールからお座敷まで。オカリナは野外歓迎。
演奏目的/オープニングセレモニーから追悼演奏まで。
演奏形態/独奏から異業種間共演まで。
所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)

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特 技/晴れ男であること。

オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。

京都府下農村在住。
雨乞い師見習い。
自然農見習い。
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