#566 単純化

#566　単純化

　人間、物がないと生きていけないな。素手では生きていけないってことだ。物というものは便利なものだけど、やっかいなものでもあるな。なぜなら、物が物を呼んで、いくらでもふえていくからだな。アメーバだな。ウイルスだな。ワタシの仕事部屋も、物がふえる一方で減ることがなくて、それはへんたいだな。

　寒いから服を着る。服をしまうたんすがいる。服をつくろう糸がいる。糸を縫い付ける針がいる。はさみと針山もいる。
　お茶を飲むには湯呑みがいる。湯呑みを洗うには洗剤がいる。洗剤を入れる容器がいる。容器を置く台がいる。湯呑みをしまっておく水やか何かもいる。
　文字を残すには紙がいる。紙に文字を書くには鉛筆がいる。鉛筆を削るにはナイフがいる。ナイフを切れるようにするには砥石がいる。
　てな具合に、要するに、ある物を持つと、それを使うため、あるいは管理するために他の物が必要になってくるのだ。だから、物は際限なくふえていく。

　こんなに物をいっぱい持っていて、突然死んだら回りが迷惑するだろな。遺品を集めて「巴だリョウヘイ記念館」なんか作ったって、誰も来ないだろうしな。「巴だリョウヘイが座っていたイス」なんか誰も見たくないだろうし「巴だが愛用していた孫の手」なんか、真っ先に捨てられるだろうな。

　きょうは、うれしいことがあった。一年以上前に服のポケットに入れたまま洗濯してしまって、ＰＣにつなげば動くものの充電ができなくなっていたｉＰｏｄを後生大事にしまい込んでいたのだが、いよいよ修理に出す決意をし、現状確認のためにＰＣに接続してみたところ、あれよあれよと言う間に充電できてしまったのだ。う〜ん、この世にはまだまだ科学では解明できない不思議なことがあるものだ。
　気に入っていた物なのでやはりうれしい。が、ｉＰｏｄを使うにはヘッドホンがいる。ＰＣとの接続コードもいる。これらが結構な場所をとる。もちろん置く場所もいる。こうしてまた仕事部屋がせまくなった。
　ｉＰｏｄの一個や二個、と笑うなかれ。ｉＰｏｄも積もれば山となるのだ。

　ここ数日、仕事環境の単純化を図っているのだが、これでまた一歩後退だ。これまで、できるだけ多くの物についてバックアップ、つまり予備を用意しておくことは悪いことではないと考えていた。が、これが住環境と仕事環境を大いに複雑化・繁雑化しているのも事実だ。が、予備品の見直しは容易ではない。そしてワタシは、思い切って予備を捨てたとたんにそれが必要になるという間の悪さを持って生まれているのだ。

　腕一本で食っていく、身ひとつで世を渡るだなんて、夢物語だ。「包丁一本、さらしに巻いて〜」うそつけ。ケイタイも持ってれば所帯道具一式トラック一杯はあるだろうが。
　が、どこかで物の増殖に歯止めをかけたい。それには、自分自身を単純化するしかないように思える。

　揚琴の管理と移動のたいへんさの反動で、シンプルなオカリナに惹かれたワタシ。演奏活動の単純化を図ったとも言える。が、そのオカリナも一個ふえ二個ふえ、ステージではオカリナを置く台はいるし、ＣＤプレイヤーやマイクとスピーカー一式までいる場合もある。おまけに、伴奏を作るＰＣと録音機材とその周辺機材に埋もれてしまって、なんだこりゃ、単純化どころか揚琴よりもへんたいじゃないか。

　明日からＳＧ管アカペラソロだけで食っていく決意をして、それはよかった。

　おしまい。　
10.02.01 記　

巴だリョウヘイがすわっていたイス。

2010/02/02 (Tue) 雑　感 TRACKBACK() COMMENT(0)