#563 二人三脚

#563　二人三脚

　コードだらけのマイ仕事部屋に、またぞろ新しい電化製品がやってきた。あー、もう数えきれんほどのコードでこんがらがりそうだっつーか、とっくにこんがらがっていてそれはへんたい。まったく、電気以外の動力で動く機械はないのか。と言って石炭でしか動かんというのも困るし、唐揚げを与えなければ働かんというのはワタシだけで十分だろうし。

　が、このたびの機材は、コードがいらない。充電式だからだ。充電するときにさえコードをつないでやれば、あとは行きたい所へ自由に行ける。気がつけば、となりの部屋まで歩いていってしまってる。で、どこへ行ってしまったのかわかるように、鈴をつけた。名前も付けた。「レク」という。

　きのう届いたこのポータブル・デジタル・レコーダー。手のひらに納まるサイズだが、なかなか多機能でかしこいやつだ。また、ちっちゃくて高性能なマイクが埋め込まれている。実はこの「レク」は、主にマイクでのかんたん録音用として雇ったのだ。

　なんのためのかんたん録音かって？ だいいちはオカリナのレッスンだ。生徒さんたちの演奏を録音して、その場で聴いてもらい、分析・検討材料にしてもらうのだ。
　演奏していると、自分たちの演奏の出来映えはなかなかわからないものだ。が、これは自然なことだ。自分の音を客観的に聴くことは、想像以上にむずかしいものなのだ。

　で、録音が役に立つ。名人の国への最速の乗り物はレコーダーだ。
　が、ほとんどの人は録音をいやがる。悪いところばかり気になる、自信をなくすと言うのだ。ごもっとも。楽しく吹いていたつもりが、音程はふらふらで、リズムはふにゃふにゃで、おまけに一拍ずれたまま吹いていて最後まで気がついていない自分を知ることになる場合もある。録音された自分の演奏を聴くには、なかなか勇気がいる。

　さて、鏡で自分の姿を見たことがない人は少ないだろう。自分の姿をチェックするために鏡は存在する。時々見とれる人もいる。だから、鏡がないと、特に女性はとても困ることだろう。
　レコーダーを、鏡のように気軽に使ってほしいと思う。つまり、演奏の「身だしなみ」だ。恥ずかしがることは何もない。むしろ、身だしなみをせずに人前へ出ることの方が、よほど恥ずかしい。
　欠点を他人に指摘されてしぶしぶ直すよりも、自分の耳で確かめて納得して直す方がよほど良い。が、どうしてもいやだというグループには、もちろん強要するつもりはない。今まで通り、センセイが「ここ、ちょっと乱れてますよ〜」と言えばいいことだ。・・・まるで着付け教室ですな。

　もちろん、ワタシ自身の演奏も、これまで通り録る。ＭＤに替わってライブで働いてもらう。

　今夜対外デビューするレク。今夜のレッスンは、ワタシの生徒さんの中では唯一、録音とビデオ撮影を自主的に練習に取り入れてきたグループだ。だから、きっとレクはみんなにかわいがられることだろう。

　レクにはいろんな工夫が施されている。なんとカメラの三脚を取り付け、立てることができる。なんとなんとその三脚、たまたまウチにあった。父が使っていた折りたたみ式の三脚だ。わずか２５ｃｍに縮められるので、レクといっしょにバッグの中に納まってそれはよかった。映像人間だった父は、眠っていた自分の七つ道具のひとつが音楽人間の息子に思いもよらぬ使い方をされて、どんな気持ちでいるだろーか。
「大事に使うべし。落とさないようにすべし。良い仕事をして喜ばれるべし」
　へいへい。三脚を使うたびに監視されているようで、これでは二人三脚だな。で、レッスンの指導も、ワタシとレクの二人三脚でそれはよかったとさ。

　おしまい。　
10.01.26 記　

　

2010/01/27 (Wed) オカリナ TRACKBACK() COMMENT(0)