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揚琴、オカリナ & インディアンフルート奏者がつづるいろいろばなし。
音楽、田舎暮らし、自然・環境、時事、ほかいろいろ。
どうぞ、ごゆっくり。
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#529 白 旗

 調べに調べて、探しに探して、それでも見つからないときは・・・あきらめるしかない。問題は、いつあきらめるかだ。決断は早い方がいい。が、少しくらいは、敗北を味わい、そこから何かを見いだそうとあがく時間を持ったっていいじゃないか。てなわけで、土間に座り込んで、穂に付いたままの籾をナイフでこそぎ落とす作業を始めた。

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 稲刈りが終わってから一ヶ月・・・だっけか。もはやわからないほど日にちが経った。が、まだ一粒も口に入らないマイお米。最後の最後で足停めを食ってからはや半月近く。その間調べつづけた。探しつづけた。
「誰か、簡単な人力籾すりの方法を教えてくれ〜」

「槌でたたく」「すり鉢の中ですりこぎで摺る」「石臼で摺る」
 こうした江戸時代以来の手法があることは、もちろん知っていた。が、さすがに江戸時代に生きる自信はないワタシが探し求めていたのは、せめて昭和の世に入ってからの手法なのだ。が、が、それはどこにもなかった。なかったと言ったら、ほんとうになかったのだってば。

 脱穀の技術は、石器や木の道具を使っての手作業から「こきばし」という大きなお箸のような道具が生まれ、元禄時代に千歯こきという道具へと進み、大正になって足踏み式脱穀機が発明されるに至った。
 ところが、籾すりの技術はと言えば、江戸時代に石臼、土臼で摺るようになって以来、なんと昭和に動力式が生まれるまで、まったく進歩がなかったようなのだ。道理で、ワタシなんかがいくら知恵を絞っても楽な方法が見つからないはずだ。

 試しに、すり鉢とすりこぎで籾すりをしてみた。これほどはかどらない作業も珍しい。おまけに仕上がりが良くない。数えきれないほどの籾のひと粒ずつから、固い籾殻を取り除くことの困難さ。食べるのにこんなに苦労するものを主食にすることになった人間のサダメ。それを受け入れ、ひたすら食べるために稲と、籾と格闘をつづけてきた歴史を思い、気が遠くなって、こそぎ取った籾の上にばったりと倒れ込んでしまった。

 人はおそらく、臼でごりごりと籾を摺りながら、ずっと考えつづけていたのだろう。「なんとか楽に籾殻を取り除く方法はないものか」そして動力式が生まれるまで、数百年を要したわけだ。

 産業革命の成果は、蒸気機関車などに代表される交通手段と重金属工業、そして軍需工業ばかりに目が行きがちだ。が、大多数の人間がもっとも待望していたのは、穀物の最終処理機械ではなかったのか。ワタシは今、そう確信できる。

 手作業による籾すりの苛酷さにふれたワタシは、人間のこうまでして米を食べようとする執念に圧倒されていた。食に対する執念は、取りも直さず生存に対する執念、動物的執念なのだ。人間は知恵を持つ動物にすぎないことが実感出来る。そしてワタシはここまで、まぎれもなく一匹の、生存に対する執念を燃やし続ける知恵ある動物であった。が、それは、眼前の主食を食べる術を知らない、はぐれてさまよえる動物だったのだ。
 ワタシは孤独と無力感に胸をかきむしりながら、再び籾の上にばったりと倒れ込んだ。

 ここまで自然と格闘し、親しみ、慈しみ、大地が与えてくれる糧を自然の一部たる存在として受け取ってきた。が、知恵を持つ動物と呼べたのは、ああ、ここまでだった。ワタシはついに自然に対して白旗をかかげ、ただの人間にもどらざるを得なくなる模様だ。

 で、小型電動籾すり機を発注することにしたんだとさ。

 おしまい。 
09.11.19 記 
10月、稲木に干した稲の束の内部。あっ、横向けかっ。
稲木内部
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管理人について

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巴だ リョウヘイ
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職業:
揚琴・笛演奏屋 オカリナのセンセイ
趣味:
ほしい。
自己紹介:
 
演奏活動範囲/全国の都心から山間地まで。
演奏場所/ホールからお座敷まで。オカリナは野外歓迎。
演奏目的/オープニングセレモニーから追悼演奏まで。
演奏形態/独奏から異業種間共演まで。
所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)

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特 技/晴れ男であること。

オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。

2018年、京都府下農村から大阪府下住宅街に移住。
今も雨乞い師見習い。
今も自然農見習い。
ノアのおとうちゃん。
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