#528 少数派として

#528　少数派として

　ときどき、自分の考え方や感じ方が世の中では少数派であることを思い知らされる機会がある。が、少数派であることに悔しさや焦りを感じることはない。揚琴を演奏するなど、少数派の最たるものだ。オリジナリティーの発揮の結果が自分を少数派として位置付けるならば、それは如何ともしがたい。自分がその事実を受け入れられなければ、自らを偽って生きるしかない。

　が、自分が投票した候補者がことごとく落選する場合、自分が政治的にも少数派であることになる。それは少々もの悲しいやもしれない。これまでのほとんどの選挙で、ワタシが投票した候補はなぜか落選した。このことは、ワタシが政治的に少数派であることをはっきりと物語っている。

　さて、先日無手勝流応援演説をさせていただいた町会議員候補のＳさん。めでたく再選を果たされた。Ｓさんはワタシの政治的少数派としての悲哀を、四年前につづいてぬぐい去ってくれた。このたびは町の合併による議席減に加えて新人候補が乱立しての激戦模様だったが、前回を上回る得票だったのは、ワタシの応援演説の成果にちがいないっ。
　冗談はさてオキシドール、多くの人がＳさんの再選を望んだのは、議会においては少数派ながら、多数派に対して一歩も引かずに住民の代表としての責務を果たしつづけ、実績をあげて来られたからだ。

　そういえば、新人候補も当選していた。選挙公報でも宣伝カーでも、そして直接会ったときでさえも「新しい風を吹き込む」しか言わず、ただのひとつも公約を掲げてこなかった候補者が当選することの不思議。いったい、誰がなんのために投票したのか。ある地域では、長年ドブ板が選挙期間中に候補者に踏まれつづけて長持ちしないという苦情が寄せられているそうだが、そのドブ板の補修を町に要望するために出馬し当選したのだろうか。

　町会議員の報酬は、当地の場合は、平議員で年間約２６０万円だ。四年間の任期いっぱい在職するとしたら、議員一人につき一千万円以上の税金が支払われることとなる。もちろん、かなりの額になるはずの活動経費と諸手当は別勘定だ。有権者は、このことをよくよく考えて投票すべきだと思う。
　見識も展望も何もなく、限られた住民の御用聞きとしてただただ利益誘導に奔走するのが議員の仕事だとカンチガイしている輩が多いように思う。そうではなく、町全体、ないし国全体を見る視点から住民の暮らしを考えて行動する人でなければ、多くの住民にとってはその議員の給料はなんの役にも立たないことになる。

　Ｓさんは、お勤めしつつ猪や鹿の猟もされるご主人とともに、お米や小豆も作っておられる。来春からはマイ田んぼのとなりの田んぼでもお米作りを始められる。移住組のワタシや田んぼ的師匠のＫさんのお米作りの手法に興味を示し、手を染め始めた数少ない地元住民でもある。ワタシとＫさんは、Ｓさん一家を本格的に不耕起農法に巻き込もうと企てている。
「楽できると思って不耕起にしたのに、かえって手間がかかるやんか〜」
　いえいえ、その苦労はきっといつか、同好の士が増えこの地域の環境が守られるという成果となって還ってくるのです。そして、少数派が多数派になる日がいつか必ず訪れるのです。
　不耕起農法に取り組む議員さん一家だなんて、ぜひ全国に知らせたいものだとさ。

　おしまい。　
09.11.17 記　

濡れそぼる紫式部

2009/11/18 (Wed) 田舎暮らし TRACKBACK() COMMENT(0)