#204 後ろ向きな先進国

#204　後ろ向きな先進国

　いくら効き目がある薬を開発できたからといって、破壊的な副作用があれば使えない。その副作用に目をつぶって薬の効き目だけを追求してきたのが、２０世紀という時代ではなかったか。そして、先進国と言われる国々は、薬をどんどん発展途上国と言われる国々に輸出したが、副作用のことは教えてこなかった。また、発展途上国の方でも、副作用に気がついた後も、それには目をつぶりつづけてきた。

　さて、環境先進国といえばスウェーデンとドイツの名がまっ先にあがるが、最近のイギリス、ロンドンの取組みはすばらしいそうだ。ＣＯ２排出を極限にまで押さえるため、渋滞多発地域に指定された道路への進入車には「渋滞税」が課せられる。ハイブリッドカーは様々な面で優遇される。街のいたるところにハイブリッドカー用の充電機が設置され、無料で使える。などなど。

　このような取組みによって、市民の大気環境保護意識は半ば強制的にではあるが、加速度的に進むだろう。と言って、ロンドンを手放しで「えらい！」とは言えない。なぜなら、現在のＣＯ２の大量排出は、産業革命に始まっており、産業革命はイギリスで始まったからだ。

　ＣＯ２の最大の排出国としてアメリカと中国がやり玉にあげられているが、そもそもイギリスがおっぱじめた産業革命から温暖化は始まったのだ。その元凶を作った国であるイギリスが、首都でこれまでの動きにストップをかける行動に出たからといって、手放しで「えらい！」とは言えないのではないか。

　ロンドン始め先進国の取組みは、長期的に見れば時間稼ぎでしかない。薬の使用量を押さえるというよりも、ある薬を別の薬に置き換えようとしているだけのものだ。
　なぜなら、石油に替えて電気を使おうという動きには無理があるからだ。現代が必要としている量の電気を石油によらずに発電しようとすれば、原子力発電にたよるしかない。大気環境保護の観点から見れば、原子力は「クリーン」なエネルギーとしてアッピールされているが、とんでもないことだ。そのリスクは人間のさかしらでは量り知れないほど大きい。
　それに、ロンドンのこの取組みには、原子力政策を推進する政治家や官僚とそれらにむらがる輩の利権も見え隠れするように思える。イギリスは核兵器と原潜の保有国でもあるのだ。

　と、ロンドンの取組みについて、まずは否定的な側面から考えてみた。つづきは肯定的側面を考えてみたい。

　つづく。　
08.01.30　

溶けちゃった。

2008/01/31 (Thu) 時　事 TRACKBACK() COMMENT(0)