揚琴、オカリナ & インディアンフルート奏者がつづるいろいろばなし。
音楽、田舎暮らし、自然・環境、時事、ほかいろいろ。
どうぞ、ごゆっくり。
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#208 たらちりとてちん
「おーい、お里」
「はい、旦那さま」
「明晩の大事なお客さまやがな、ことのほか猫がお好きなご仁でな。猫がおったらご機嫌になりなさるんや。なんとか猫を一匹用意してくれんか。それと、今晩の夕げは鱈(タラ)ちりにしてくれ。熱燗とな」
「かしこまりました」
「おーい、お里」
「はい、旦那さま」
「明晩の大事なお客さまやがな、ことのほか猫がお好きなご仁でな。猫がおったらご機嫌になりなさるんや。なんとか猫を一匹用意してくれんか。それと、今晩の夕げは鱈(タラ)ちりにしてくれ。熱燗とな」
「かしこまりました」
いつぞやの泥棒猫のボタンは、あれだけひどい目にあったというのに、イワシの頭一個でまんまとおびき出され、女中のお里につかまってしまいよりました。
「上手にお客さまのお相手をしたら、イワシを丸ごと食べさせてやるでな」
「な〜お」
「あー、猫の手配で手間取ってしもた。鱈が売れ切れてへんかったらええのやけれど」
お里が市場に着くと、案の定、鱈は売り切れてしもてました。
「おっちゃん、なんぞ鱈のかわりになる白身の魚はあらへんか」
「きょうはもう、ウグイしかあらへんわ」
「ウグイみたいなまずい魚はあかん。だいいち、川魚やないの」
ウグイは、猫もまたいで通るということで「ネコマタギ」などと呼ばれるくらいまずい魚とされてますが、冬のウグイは身がしまって、甘露煮にするとなかなかいけるのでございます。それはそうとて、鱈ちりの材料に困ってしまったお里は、一計を案じました。
「見栄っ張りの旦那さまのことや。ウグイの鍋をめずらしい鱈ちりやと言うて出したら、知ったかぶりして、うまいうまい言うて食べなさるにちがいない。身はつみれにしたら、見た目はわからんやろう」
どこぞの落語みたいな話ですな。お里はウグイのつみれを作って、猫のボタンの前に置いてみました。するとつみれに鼻先を近づけたボタンは、すぐに顔をそむけ、つみれをまたいで行ってしまいよりました。
「旦那さま、夕げのお鍋ができましてございます」
「お、鱈ちりのはずがつみれが置いてあるのはなんでじゃ」
「今晩の鍋は、川に登ってきた鱈を使っためずらしい一品です」
「川に登ってきた鱈とはな。鮎かウグイみたいな鱈がおるのやな」
「は、はい。小浜の漁師の話では、ほんのたまに北川にまで迷い込んでくる鱈がいるそうで、遠路泳いできた味は格別やそうでございます」
「なんという名前の鍋やったかの」
「はい、『たらちりとてちん』と申します」
「これが『たらちりとてちん』とな」
「やっぱりごぞんじでしたか」
「いや、知らなんだな」
「・・・・・」
「そんなめずらしい一品やったら、わしひとりで食べるのはもったいない。明日まで置いといて、猫好きのお客さまにも食べていただこか」
「い、いえ、お客さまに召し上がっていただくわけにはまいりません」
「なんでじゃ」
「お客さまを、猫がまたいで通ります」
「上手にお客さまのお相手をしたら、イワシを丸ごと食べさせてやるでな」
「な〜お」
「あー、猫の手配で手間取ってしもた。鱈が売れ切れてへんかったらええのやけれど」
お里が市場に着くと、案の定、鱈は売り切れてしもてました。
「おっちゃん、なんぞ鱈のかわりになる白身の魚はあらへんか」
「きょうはもう、ウグイしかあらへんわ」
「ウグイみたいなまずい魚はあかん。だいいち、川魚やないの」
ウグイは、猫もまたいで通るということで「ネコマタギ」などと呼ばれるくらいまずい魚とされてますが、冬のウグイは身がしまって、甘露煮にするとなかなかいけるのでございます。それはそうとて、鱈ちりの材料に困ってしまったお里は、一計を案じました。
「見栄っ張りの旦那さまのことや。ウグイの鍋をめずらしい鱈ちりやと言うて出したら、知ったかぶりして、うまいうまい言うて食べなさるにちがいない。身はつみれにしたら、見た目はわからんやろう」
どこぞの落語みたいな話ですな。お里はウグイのつみれを作って、猫のボタンの前に置いてみました。するとつみれに鼻先を近づけたボタンは、すぐに顔をそむけ、つみれをまたいで行ってしまいよりました。
「旦那さま、夕げのお鍋ができましてございます」
「お、鱈ちりのはずがつみれが置いてあるのはなんでじゃ」
「今晩の鍋は、川に登ってきた鱈を使っためずらしい一品です」
「川に登ってきた鱈とはな。鮎かウグイみたいな鱈がおるのやな」
「は、はい。小浜の漁師の話では、ほんのたまに北川にまで迷い込んでくる鱈がいるそうで、遠路泳いできた味は格別やそうでございます」
「なんという名前の鍋やったかの」
「はい、『たらちりとてちん』と申します」
「これが『たらちりとてちん』とな」
「やっぱりごぞんじでしたか」
「いや、知らなんだな」
「・・・・・」
「そんなめずらしい一品やったら、わしひとりで食べるのはもったいない。明日まで置いといて、猫好きのお客さまにも食べていただこか」
「い、いえ、お客さまに召し上がっていただくわけにはまいりません」
「なんでじゃ」
「お客さまを、猫がまたいで通ります」
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管理人について
HN:
巴だ リョウヘイ
性別:
非公開
職業:
揚琴・笛演奏屋 オカリナのセンセイ
趣味:
ほしい。
自己紹介:
演奏活動範囲/全国の都心から山間地まで。
演奏場所/ホールからお座敷まで。オカリナは野外歓迎。
演奏目的/オープニングセレモニーから追悼演奏まで。
演奏形態/独奏から異業種間共演まで。
所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)
コンタクト方法/上記のホームページ(HP)の「FAQ & Form」のページからどうぞ。
特 技/晴れ男であること。
オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。
2018年、京都府下農村から大阪府下住宅街に移住。
今も雨乞い師見習い。
今も自然農見習い。
ノアのおとうちゃん。
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演奏場所/ホールからお座敷まで。オカリナは野外歓迎。
演奏目的/オープニングセレモニーから追悼演奏まで。
演奏形態/独奏から異業種間共演まで。
所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)
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特 技/晴れ男であること。
オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。
2018年、京都府下農村から大阪府下住宅街に移住。
今も雨乞い師見習い。
今も自然農見習い。
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