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揚琴、オカリナ & インディアンフルート奏者がつづるいろいろばなし。
音楽、田舎暮らし、自然・環境、時事、ほかいろいろ。
どうぞ、ごゆっくり。
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#210 創作鍋

「なあ、お里」
「はい、旦那さま」
「わしは鍋が好物やのに、この冬は一向にまともな鍋が口に入らん。『かも』鍋、『雪』鍋、『ボタン』鍋に『鱈ちりとてちん』、あげくのはては『牡蠣の殻』鍋や」
「どうぞおひまを」
「まあ待て。ひまを出そかとも思たけどな、わしはお前の妙にとんちがはたらくところに気がついたのや。今晩、この国のどこにもない鍋を作ってわしをあっと驚かせたら、この先もうちに置いてやってもええ」

 いわゆる『創作鍋』を作れっちゅうことですな。お里は旦那さまにそれこそ妙な見込まれ方をしてしまったようで。もっとも、あの鍋のあれこれがとんちと言えるシロモノなのかどうか。どう見てもただのごまかし、言い逃れのたぐいとしか思えませんが、それはさてオキシドール、お里は、頭をかかえてしまいました。

「あー、えらいこっちゃ。この国のどこにもない鍋やなんて、そんなもん、かんたんに作れたら世話ないわ」
「な〜お」
「え、作ってたやないかってか。こら、ボタン、お前のせいやぞ。お前もどうにか役に立ちなさい」
「な〜お」

 ただ坐っておっても、毎度夕げの刻限は迫ってまいりますな。旦那さまはまだかまだかと待ちわびておられます。お里はようやく一計を案じました。

「旦那さま、夕げの鍋の支度が調いましてございます」
「ほうほう、待ちわびたぞ」
「きょうは、出汁にこだわってみました」
「これこれ、さんざん待たせたのやから、ふたくらい取っておかんか」
「申し訳ございません」

 夕げの席では、ふたをしたままの大きな土鍋が、ほんわかと湯気をもらしております。旦那さまは重たそうにふたを取りました。すると土鍋の中で、猫のボタンがお湯につかって、気持ちよさそうに丸くなっております。

「うわっ、なんぼわしがグルメでも、猫の鍋とはなんじゃっ」
「この猫は、これまで旦那さまのお口に入るはずやった鴨と猪と牡蠣をたらふく食べておりますゆえ、さぞ良い出汁が出ることと」
「あほっ、猫の出汁なんか食えるかっ」
「あはは、よかった。ずいぶん驚かれたご様子で」
「ばかもんっ、わしは出来の良さでびっくりしたかったんや。やっぱりお前はただのアホ女中や。とっとと故郷に帰れッ」
「わたしがいなくなったら、旦那さまが困られることになります」
「なにっ、アホ女中がわしをおどすかっ」
「わたしがいなくなれば、この猫が餓えて死にます。餓えて死んだ猫は、旦那さまをうらんで化けて出ます」
「な〜お」
「化け猫なんかちーとも怖いことないわい」
「化けて出た猫は、行灯の油をなめてしまいます。行灯の油がなくなったら、夜はすぐに暗くなります。夜がすぐに暗くなったら、旦那さまにお子様がふえます。お子様がふえたら、大きな土鍋がいります。大きな土鍋は、女中が扱いに気を使います」
「それがどないしたっちゅうんや」
「女中が土鍋に気をとられているすきに、どこぞの猫が鍋の具を食い逃げしてしまいます」
「ほなら結局、お前がおってもおらなんでも、わしは鍋を口にできんということやないかっ」
「わたしがおれば、今度こそおいしい鍋を・・・」
「そんなこと、死ぬまであてにできるかっ」
「では、旦那さまが棺桶に入られるときには、せめてあの世でおいしい鍋を召し上がれますよう、土鍋をおひざの上に乗せてさしあげます」
「棺桶に空の土鍋なんか入れてもろたら成仏できんわっ。だいいち重たいっ」
「では、なんぞ軽い具も入れて、ふたは取っておきましょう」

 おしまい。 
08.02.05 
梅のつぼみ
梅の芽吹き

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管理人について

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巴だ リョウヘイ
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職業:
揚琴・笛演奏屋 オカリナのセンセイ
趣味:
ほしい。
自己紹介:
 
演奏活動歴/揚琴、27年。オカリナ、16年。
活動範囲/全国の都心から山間地まで。
演奏場所/ホールからお座敷まで。オカリナは野外歓迎。
演奏目的/オープニングセレモニーから追悼演奏まで。
演奏形態/独奏から異業種間共演まで。
所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)

コンタクト方法/上記のホームページ(HP)の「Contact」のページからどうぞ。

特 技/晴れ男であること。

オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。

京都府下農村在住。
雨乞い師見習い。
自然農見習い。
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