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揚琴、オカリナ & インディアンフルート奏者がつづるいろいろばなし。
音楽、田舎暮らし、自然・環境、時事、ほかいろいろ。
どうぞ、ごゆっくり。
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#314 身にまとうもの

 天然素材100%というコピーがもてはやされる時代だ。それが手作りならばなお喜ばれる。衣類が天然素材と手作りを極めれば、綿や繭や麻の茎や羊の毛の繊維から手で糸を紡ぎ、植物や泥などの天然染料で染め、手織りして、手縫いで服に仕立てるという工程になる。そんなたいへんなことを誰がするものかと、今の日本人なら思うにちがいない。が、そんな服を作って売っている人がいる。

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 天然素材100%・手作りが希少価値になっているという状況は、考えてみれば妙だ。そもそも、われわれの身体は天然素材100%でできている。それがどこでどう間違ったのか、化学的に作られたものを口にし、身にまとうのが当たり前になった。それで果たして人の暮らしは豊かになったと言えるのかどうか。
 この点に疑問を抱き、人が自然とともに暮らしていた時代の素材と作業工程を守り、さらにはそこに現代的価値も付加し、地道に服の製作・販売活動をつづけている人々と出会った。

 きょうは、京都の綾部という町で揚琴の演奏をした。会場は見頃の萩と高台からの眺望が見事な正暦寺。最後の曲での若きタブラ奏者・松本晃祐氏とのセッションは、ひさしぶりにインドな空気感とインプロヴィゼーションのスリルを堪能させてくれた。
 このコンサートは、同会場での服の展覧会の協賛イベントだった。その服を作っているのは「うさと」という会社だ。うさとは、タイ北部の田舎の、今も昔ながらの暮らしを守りつづける地域で昔ながらの手作業で作られている布地を使って服を作っている。その服は、色が美しく、どれもゆったりとしており、着心地が良く、なんだか開放的でおおらかな気持ちにさせてくれる。そして、ふたつと同じ物はない。

 うさとの代表さとううさぶろうさんは、タイの田舎へ行ってただ布を買い付けてくるだけではない。村の人の生活ペースを大切にした上で仕事を発注することで、村の活性化に一役も二役も買っているのだ。うさとの服の布を作るために、村には人が定着し、街から還ってきて布作りの仕事に就く人もふえた。おかげでこの村は元気になったそうだ。
 うさとの服に付加された現代的価値とは、デザインだけではなく、こうした側面もある。

 自分が着ている服の糸の一本一本が人の手によって紡がれ、足踏みの機で織られていることを想うと、そこに込められた人々の暮らしぶりまでを身にまとっているような気持ちになる。見知らぬタイの田舎の自然と風景が目に浮かぶ。自然の染料で染められた糸で織られた布に包まれると、野山の精気に包まれているような心地になる。何ひとつ混じりっけのない水を飲んだときのようなさわやかでエネルギッシュな気分になる。そんな服は、自分が大地の子であることを思い出させてくれる。

 きょうは、主催者うさとさんのご要望で、うさとの服を着て演奏した。とうとうファッションモデルだ。ワタシが身にまとうことになったのは、淡い緑と黄色の太めの綿糸が織り混ぜられた布地のゆったりとしたシャツだった。それは、ワタシのために生まれてきた服のように思えた。
 ズボンはと言えば、生成りの麻の、これまたゆったりとしたものだった。7部丈の軽快なデザインだったが、ワタシがはくと8.5部丈になってそれはよかったっ。
 演奏が終わってもシャツとズボンと別れがたくなってしまい、連れて帰ってしまったとさ。

 おしまい。 
08.09.15 記 
ウチにやってきたうさとの服
うさとの服
会場の正暦寺は見事な萩が見頃でした。
正暦寺山門
正暦寺萩
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管理人について

HN:
巴だ リョウヘイ
性別:
非公開
職業:
揚琴・笛演奏屋 オカリナのセンセイ
趣味:
ほしい。
自己紹介:
 
演奏活動範囲/全国の都心から山間地まで。
演奏場所/ホールからお座敷まで。オカリナは野外歓迎。
演奏目的/オープニングセレモニーから追悼演奏まで。
演奏形態/独奏から異業種間共演まで。
所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)

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特 技/晴れ男であること。

オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。

2018年、京都府下農村から大阪府下住宅街に移住。
今も雨乞い師見習い。
今も自然農見習い。
ノアのおとうちゃん。
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