#311 事実と虚構のはざまにて

#311　事実と虚構のはざまにて

　みーちゃんによれば、みーちゃんの学校のＴ先生が、ワタシにオカリナを習っているとおっしゃっていたそうだ。が、ワタシはＴ先生のことを知らない。ワタシはＴ先生にオカリナを教えていないし、かつて教えたこともない。フルネームを聞いたが、姓名ともにまったく覚えがない。となり町に住んでおられるそうだが。
　どう考えればいいのだろう。

　 みーちゃんかＴ先生のどちらかが、ウソをついているのだろうか。いや、みーちゃんは、けっしてつまらないウソをついたりしない。かといって、Ｔ先生が教え子にそのような意味不明のウソをつく理由があるとは考えられない。

　キーワードは「巴だセンセイ」「オカリナ」「習う」のみっつだ。はじめのふたつは聞き間違えることはあり得ない。「習う」はこの場合、「習っている」「習っていた」「習っていない」という活用形が考えられる。が、「習っている」「習っていた」は事実に反するし、「習っていない」などとわざわざ言うはずはない。
　では「習いたい」だろうか。いや、これとて小さな教え子にわざわざ言う言葉とは思えないし、「習っている」と「習いたい」のニュアンスのちがいくらい、みーちゃんでなくても小さな子供にだってわかるだろう。それに「習いたい」だったら、あとにつづくであろう他の言葉もおっしゃるはずだ。

　言えることは、Ｔ先生はワタシがオカリナを教えていることをご存知だということだけだ。

　考えられるのは、みーちゃんが何かの言葉を聞き逃したことだ。「（知り合いが）習っている」ではないだろうか。・・・う〜ん、たしかにみーちゃんにはおっちょこちょいなところもあるが、推論としては無理があると思えるなー。

　来週、またみーちゃんがウチにやってくる。そのときには真実がわかるはずだ。あー、気になる。

　ここで、はたと気がついた。もうひとつうたがうべき対象があったのだ。それは、ワタシの脳ミソだ。つまり、毎月オカリナを教えているのに、その人のことをどうしても思い出せないということもあり得るのではないのか。
　であれば、ああ、なんという悲惨な結論なのだろう。この歳でそんなことはあり得ないと思いたい。が、事実の前には謙虚でありたい。ありたくない。ありたい。ありたくない・・・。

　いやいや、世の中には極端に陰が薄い、幽霊のような人もいるのではないか。であれば、その人はレッスン料だけ払ってワタシの手をわずらわせることがまったくない、理想的な生徒さんだと言える・・・のだろうか。

　おしまい。　
08.09.10 記　

この見知らぬ大きな草には、どんな花が咲くのだろう。

2008/09/11 (Thu) オカリナ TRACKBACK() COMMENT(1)