#317 恥的所有権

#317　恥的所有権

　世の中には、まことにユーモアに長けている人がいる。そんな人にかかれば、悪事もくだらないニュースも笑いの種になってしまう。上質のユーモアは、物事の本質を暴き出し、おだやかに教訓を与え、心を和ませ、人と人との連帯を深める。そんな例に出会えることは少ないが、これはなかなかというものに出会った。

　世間にはとかく権利にうるさい人が多い。音楽関係の権利の中にも、こんなことにまで法的権利が引っ付いているのか、と思わされることもある。
　さて、世の権利主張の氾濫をユーモアたっぷりに皮肉ったサイトがある。しかもそれは、オカリナ製作と演奏法についてのサイトなのだ。

　そのサイトの管理人さんは、自ら考案されたオカリナの「持ち方」にご自身のお名前をお付けになり、その持ち方を誰かが公開する場合は、必ずこの管理人さんが考案された持ち方であることを明示し、その名前で呼ぶように、と書いておられるのだ。

　うーむ、見事なアイロニーだ。これほど巧みに知的所有権主張の氾濫を皮肉った記事にはお目にかかったことがない。洗練されたユーモアに脱帽。

　すばらしいオカリナを製作し、すばらしい演奏をされるこの方の、いったいどこからこのようなジョークが生まれてくるのか。興味がある方はサイトを訪問してみられては。

　http://www.fl-oca.com/op/moti2.htm

　オカリナの持ち方にまで名前を付け、権利を主張してみせるという発想はすばらしい。この方が暗に示すように、自分のアイデアを自分の手で無料で公開・提供しておきながら、権利だけはしっかり主張するという人が、ネット上には多いのやもしれない。それらは権威主義・売名行為だと言われても仕方あるまい。売名行為がすべていかんとは思わないが、読み手を信頼せず、「権利」「道義」という言葉や「権威」に弱い人々を食い物にしようとするところがセコい。そしてセコイヤは大きい。
　それをこのような手法で皮肉るユーモアには何度も脱帽。

　恥ずかしながら、ワタシにはこのような高度なユーモアあふれる記述は思いつかなかった。ワタシがこれまで「オカリナ修得法？」で書いてきた一連のオカリナの支え方に名付けるとすれば、左親指の置き方はさしずめ「巴だがえし」、右の小指の使い方は「巴だ固め」てなものか。柔道に巴投げというのがあったっけ。オカリナは投げてはいけません。
　で、もしワタシがこれらの知的所有権を主張したとすれば、恥も外聞もないということで「恥的所有権」とでも呼ばれるだろうな。

　ちっちゃな子供が「ぼく、お月さまを発見した！」などと言ってるうちは可愛いが。

　サンマのおいしい焼き方にまで権利を持ち出す世の中なんて、暮らしにくいよね。

　おしまい。　
08.09.18 記　

秋です。

2008/09/23 (Tue) オカリナ TRACKBACK() COMMENT(0)