#797 チャイなシンドローム １

いつだったか書いたんだけど、もう一度書きたくなったことがある…。

インドの街の路上のチャイ売りは、チャイを小さな素焼きのカップで売る。
夕方、仕事帰りの人々などでチャイ売りは忙しい。
飲んだ人は、その場に素焼きのカッブを捨てる。
インドの多くの街は地道だから、カップはその場で土に還る。
で、日本人がそれはもったいないと言ってプラ容器を持ち込んで売りまくった。
すると、みんなその場に捨てるからインド中ゴミの山になったとか。

…書きたくなったのはこのことであったのだが。

明日６月２３日は、福井にある究極の危険施設「もんじゅ」の原子炉内落下物除去作業が行なわれる予定日だ。
原子力安全・保安院がＧＯサインを出せば直ちに作業が開始される。
失敗して最悪の事故が起これば、北半球が終わる。
アメリカのフォートカルフーン原発は、洪水で電源が喪失し、現在レベル４の事態というニュースもある。
それゆえに思い出した、チャイの話。

さて、チャイは牛乳をふんだんに使った煮出し紅茶だ。
で、インドの一杯のチャイを取り巻く環境は、リサイクルとワークシェアリングの見本のようなのだ。

今でもインドの牛は、奈良公園の鹿のように、多くは放し飼いにされている。
市場をカッポする牛、牛、牛。
みんなやせておる。
牛は、路上で糞をするなり。
その糞を拾って歩く人あり。
糞をどうするかと言うと、チャイのカップを焼く人へ売りに行く。
焼物屋は、牛糞を天日で乾燥させて、焼き物の燃料にする。
牛から乳をしぼる人あり。
チャイを作って売る人あり。
で、チャイを飲む人あり。
カップは使い捨てで、人と牛に踏まれて土に還る。
赤土を焼物屋に売る人あり。
牛の餌は、誰彼なく街のみんなで面倒見る。

一杯のチャイを巡って、牛を中心に少なくとも６人の人が関わる。
材料の供給源は、暮らしぶりを維持する限りは、永遠に絶えることがない。
牛、人、土の循環の図には、ある種の美しさがある。
完ぺきに閉じた循環の円環。

　つづく。　
11.06.22 記