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揚琴、オカリナ & インディアンフルート奏者がつづるいろいろばなし。
音楽、田舎暮らし、自然・環境、時事、ほかいろいろ。
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#391 アドリブノススメ

 アドリブ演奏、つまり即興演奏ができる人は不思議だとよく言われる。楽譜もなしに音楽ができるなんて、と。ワタシは答える。あなたにもできますよ、と。だって、みんな毎日アドリブで話しているじゃないか。アドリブ演奏とは、音楽の言葉を使って即興的に話すことなのだ。だから、音楽の言葉を学べば子どもにでもできるはずだ。

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 とは言え、話芸や文章にも質の良し悪しがあるように、即興演奏にも当然良し悪しはある。だから、即興演奏は誰にでもできるという言は、質の良し悪しを度外視した話ではある。人を感動させる即興演奏をするということは、人を感動させる話をするのと同じくらいむずかしいことやもしれない。が、感動はともかく、とにかく楽しむことなら気軽にできそうだ。

 先日の母校の同窓会の一次会がそろそろお開きとなりかけたとき、かつて共にプロミュージシャンを目指したバンド仲間が即興のセッションをやろうと持ちかけてきた。で、ふたりで二十数年ぶりに演奏した。それはなんの決めごともない完全な即興演奏だった。彼がピアノでワタシはオカリナ。お互いにとって初めての組み合わせだ。
「どんな感じでやるべか」
「なんでも」
「では・・・」
 ワタシが「この音から始めるぞ」という意味で試しにピッとソの音を吹いた瞬間、彼の指もまたソの音を叩いていた。
「では、ソということで」
「ということで」

 ジャズなどの即興演奏に聴き手はいろんなことを期待するが、演奏者同士のバトルを望む人は多い。お前ら戦え、とはおだやかではないが、せめぎあいのスリルと緊張感を求めるのだ。そして演奏者の中にもそれを求める人は多い気がする。
 が、ワタシが即興演奏の最中にもっとも心を砕いていることは、せめぎあいの場でいかに相手をやっつけるかということではない。いかに時間感覚と美意識を共有するか。これに尽きる。

 ワタシが相方のTに背中を向けたままで「ソレーーー」と吹き始めると、Tがピアノで応えた。その響きは、ワタシが吹きながら心に思い描いた響きそのものだった。そうして演奏は始まり、明確なビートがほとんど前面に出ないまま、ただゆったりとした流れだけが時間を、淡く透明な光を感じさせる響きが空間を支配しつづけた。
 ふたりの音は、伸び上がり、下降し、宇宙の端から端までを行ったり来たりした。ビートが前面に出ていないにも関わらず、ふたりの音がぴたりと重なる瞬間が何度も訪れる。まるで相手の音が自分の音でもあるような感覚になる。ワタシはそのような瞬間には、身も心もしびれてしまう。そんなとき、生きていてよかったと心から思ってしまう。

 かなりアルコールが回っていたためと、その場に居合わせた一般のお客さん(そこは言わば飛び入りができるライブパブ的お店だった)に配慮したため、ほんの数分で即興セッションは終わった。いや、それがほんの数分であったのか、はたまた永遠の世界へとつづく扉を開きその向こう側に足を踏み入れていたひとときであったのか、今となってはわからない。そこでは、二十数年ぶりのセッションという現世的時間もまた、当然のように消え去っていた。ただ、Tとワタシは確かに時間感覚と美意識を共有しつづけたのだ。

 Tはずっと以前にプレイヤーを退き、その後は作曲・執筆・指導活動を東京の第一線でつづけている。この美しき酔っぱらいセッションを、ワタシはけっして忘れることはないだろう。ただし、演奏の「外面的出来映え」はすぐに忘れてしまった。それは、演奏が終わったときに、その出来映えのことは一刻も早く忘れた方がいいと思ったことに因っている。が、後にセッションの模様をビデオに収めていた人の悪い同窓生がいたことがわかったからたまらない。

 おしまい。 
09.02.16 記 
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管理人について

HN:
巴だ リョウヘイ
性別:
非公開
職業:
揚琴・笛演奏屋 オカリナのセンセイ
趣味:
ほしい。
自己紹介:
 
演奏活動範囲/全国の都心から山間地まで。
演奏場所/ホールからお座敷まで。オカリナは野外歓迎。
演奏目的/オープニングセレモニーから追悼演奏まで。
演奏形態/独奏から異業種間共演まで。
所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)

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特 技/晴れ男であること。

オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。

2018年、京都府下農村から大阪府下住宅街に移住。
今も雨乞い師見習い。
今も自然農見習い。
ノアのおとうちゃん。
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