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揚琴、オカリナ & インディアンフルート奏者がつづるいろいろばなし。
音楽、田舎暮らし、自然・環境、時事、ほかいろいろ。
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#573 鳥の歌

 立春から数日が過ぎたある日のこと。T市からK市へ抜ける山道を車で走っていると、突然春の匂いが漂ってきた。香りというより匂いというのがぴったりの、複雑でえも言われぬ臭気だ。この匂いは嗅ぎ覚えがある。以前暮らしていた山里で早春に漂ってきた、深山の春の訪れの匂いだ。全身が至福に包まれ、穏やかな高揚感を覚えた。

 冬の終わりに、人気のない深山の渓流沿いを歩いていると、この匂いに春の訪れを教えられた。根雪の下から緑が顔を出す頃だ。一言で言えば、生命力があふれる、有機的な匂いだ。けっして不快なものではない。むしろ深く吸い込むと全身が活性化されるような気がする。
 この複雑な匂いの正体はなんなのだろう。何か単体が発するものではなく、多くのものが発する臭気の集合体であるように思う。そしてそれは、頭上からではなく、足下から、つまり土から漂ってくるように思える。

 ウチの横の栗林の入口に、生い茂ってしまったアジサイの株がある。その横には、たくさんの小さな赤い実を付ける大きな木が生えている。この冬をその木の梢で越したジョウビタキのつがいがいる。彼らは、近ごろはあまり我が家の軒下を荒らさなくなってそれはよかった。暖かくなってきたものだから、心も穏やかになったのだらふか。いや、きっとワタシなどには量り知れない、きわめて勝手な理由があるにちがいない。どうせワタシには、いつまでたっても鳥の気持ちはわからないのだ。

 そう言えば、この冬には例年とはちがう鳥たちの様子がいくつか見られた。ひとつは、カケスの声があまり聞こえなかったこと。もうひとつは、日本の野鳥の三大美声のひとつとされるイカルがずっと鳴いていたことだ。ここへ越してきて初めてのことだ。他の鳥たちの例にもれず縄張りの主張だと言うが、ワタシにはいろんな鳥を、そしてワタシを呼んでいるように聴こえる。・・・って、勝手な解釈でイカルには迷惑か。

 二月のある朝、掃除をしながら縁側に立ったとき、イカルの声が聴こえてきた。その声は、迷えるワタシを呼び、目を覚まさそうとしてくれているように思えた。で、ワタシは決めかねていたある仕事の向かうべき方向を決めた。何をしにどこへ行くのかって? それは言えない。
 近ごろ機密事項が多いなー。

 勝手な解釈ばかりしながら鳥たちとともに暮らしているこの十数年。昨年は特に鳥たちから様々なインスピレーションをもらった。鳥の曲もたくさんできた。が、それでいて、彼らの行動はいまだに理解できないことが多い。んなわけで、鳥たちのことを歌ったオカリナ小品集を「鳥の気持ちがわからない」と名付けてしまった。

 きょうのあるグループのレッスンで、練習中の国籍不明の曲について情報交換がなされた。それによると、この曲のリサメントというタイトルは、現スペインのカタロニア地方の言葉なのだそうだ。カタロニアといえば、ピカソを始め多くの芸術家を排出した地域としても知られる。
 カタロニア出身のチェロの巨匠カザルスが愛した曲のひとつに「鳥の歌」がある。カザルスは、国連総会に招かれてこの曲を演奏したときに、聴衆にこう語った。
「鳥の歌はカタロニア人の魂の歌です。そして、カタロニアの鳥はピース、ピースと鳴くのです」
 カタロニアの人々は、鳥の気持ちをよくわかっていたにちがいない。

 軒下にこびりついたジョウビタキのつがいのたくさんの落とし物。毎年栗林の傍らに生える山牛蒡の実をたくさん食べていた頃のものだから、紫色をしていた。秋から冬にかけて困らされたが、雪が清め、雨が洗い、すっかり色あせてしまった。そんな頃に春の訪れを知らせる山の匂いが漂ってきた。フクロウも鳴き始めた。春が進めば、また去年の鳥たちがもどってくるのだろう。今年はもしかすると、イカルがまだ見ぬ鳥を呼んでくれるやもしれない。

 おしまい。 
10.02.15 記 

梅の芽吹き



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揚琴・笛演奏屋 オカリナのセンセイ
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演奏活動歴/揚琴、27年。オカリナ、16年。
活動範囲/全国の都心から山間地まで。
演奏場所/ホールからお座敷まで。オカリナは野外歓迎。
演奏目的/オープニングセレモニーから追悼演奏まで。
演奏形態/独奏から異業種間共演まで。
所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)

コンタクト方法/上記のホームページ(HP)の「Contact」のページからどうぞ。

特 技/晴れ男であること。

オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。

京都府下農村在住。
雨乞い師見習い。
自然農見習い。
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