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揚琴、オカリナ & インディアンフルート奏者がつづるいろいろばなし。
音楽、田舎暮らし、自然・環境、時事、ほかいろいろ。
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#552 ある力

 映画「ビルマの竪琴(85年版)」を見た。泣けたなー。リアリティーと比喩的表現が独特のバランスで織り交ぜられた演出によって、国境を越えた人類愛、音楽が持つ人と人とを結びつける力を高い純度で表現することに成功していたと思う。ビルマの竪琴が実際はどんな音色なのかとの想像力もかきたてられた。

拍手[1回]


 さて、物語にたびたび登場する、日本兵の一小隊による「埴生の宿」や「旅愁」の合唱。異国の地の戦場という極限状況での束の間の休息の時に歌われるという設定が、この2曲の合唱をして聴く者の胸を打つことはまちがいない。が、日本兵たちが歌う埴生の宿が彼らを包囲したイギリス兵たちに届き、イギリス兵に銃を下ろさせ共に歌わせたシーンが、なぜこれほどまで胸を打つのか。それだけでは説明が不十分だという気がする。

 そのシーンでは、作詞・作曲者の「いわゆる」感情や意図はすっかり変質してしまっている。日本兵は歌にまぎれて戦闘準備をしているし、イギリス兵の主たる目的は歌いながらも日本兵に平和的武装解除を迫ることだった。お互い「粗末な住まいでも我が家がいちばん!」などという感情を込めて歌っているわけではなかった。作詞・作曲者が曲に込めた感情と意図を「忠実に」再現しようとしているわけではなかった。それでいて、これまでに聴いた、あるいは自分が演奏したどんな埴生の宿よりも強く感動してしまうのはなぜなのか。

「忠実な再現」というとき、われわれは何かに囚われている。慣習に、知識に、歌詞の言葉に囚われているのだ。が、作者が曲に込めた意図とは言葉ではないし、感情とは喜怒哀楽ではない。それらよりずっと深みにある、言葉を越えた意図と喜怒哀楽を越えた感情なのだ・・・というようなことを前便で書いた。このことを、ワタシに言わせば証明している一例が、ビルマの竪琴のこのシーンなのだ。

 よく「音楽は国境を越える」と言われる。埴生の宿が日本とイギリスという国境を越えて人と人とを結びつけたこのシーンは、「音楽は国境を越える」という至言を、あまりにも「忠実に」表現している。が、「音楽は国境を越える」の真意はさらに深みにあると、ワタシは考えている。その真意とは、「音楽は人と人との壁を越える力、人と人とを結びつける力を持っている」ということにちがいないと考えているのだ。そして、この力こそを、すべての作曲者は曲に込めようとしているにちがいないのだ。では、このシーンが呼ぶ感動は、実にこの力によるものなのではないか。

 この力は、作曲者の個人的所有物や特別な能力ではない。作曲者自身が、誰かから受け取ったものを他の人に伝えようとしているだけなのだ。彼にそれを伝えた誰かも、別の誰かから順に伝わってきたものを伝えたにすぎない。では、その「最初の一人」はいったい誰なのか。
 このことは、音楽が持っているこの力とは、言い換えれば何のことであるのかを考えた方がイメージしやすいやもしれない。それは、思うに、愛なのだ。

 では、愛をこの世に送り出した最初の一人はいったい誰なのか。わかりようもないが、気長に探ってみたい。言えることは、ビルマの戦場跡の地獄の光景が水島上等兵にもたらしたものは、憎しみや絶望ではなく、普遍の人類愛だったということだ。そして、戦友たちから贈られた「オイ、ミズシマ、イッショニニホンヘカエロウ」と口走りつづけるオウムは、愛をこの世に送り出した存在が水島上等兵に与えた試練であり、憎しみと絶望に対する免疫力と人類愛をより強めるための薬であったにちがいない。

 おしまい。 
10.01.04 記 
初詣にて
ミヤナリエ2

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管理人について

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巴だ リョウヘイ
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職業:
揚琴・笛演奏屋 オカリナのセンセイ
趣味:
ほしい。
自己紹介:
 
演奏活動範囲/全国の都心から山間地まで。
演奏場所/ホールからお座敷まで。オカリナは野外歓迎。
演奏目的/オープニングセレモニーから追悼演奏まで。
演奏形態/独奏から異業種間共演まで。
所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)

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特 技/晴れ男であること。

オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。

2018年、京都府下農村から大阪府下住宅街に移住。
今も雨乞い師見習い。
今も自然農見習い。
ノアのおとうちゃん。
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