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揚琴、オカリナ & インディアンフルート奏者がつづるいろいろばなし。
音楽、田舎暮らし、自然・環境、時事、ほかいろいろ。
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#269 きく〜っ

 前便ではなんとなく「じっくりと聴く」ということがテーマとして浮かび上がってきた。で、つづき的一文。
 香道の世界では、香りを「聴く」という。といっても、お香の煙の中に耳を入れて聴こうものなら「まあ、巴ださまったら、お茶目な方ですこと」と笑われる。香りを「聴く」は「味わう」という意味だ。なぜ「嗅ぐ」「味わう」ではなくわざわざ「聴く」というのか。

拍手[1回]


 おそらく、ただ「嗅ぐ」「味わう」と言ってしまうと嗅覚と味覚が合わさった印象となり、どうしても食欲というものに結びついてしまう。香りというもののデリケートさを思いその非日常性に踏み入ろうとするとき、食欲という日常性を排するために、あえて味わうという表現を避けているのではないかと、勝手に想像している。

 また「見る」という表現と比べてみれば、「見る」という瞬間的行為に対して「聴く」には時間が伴う。香りを嗅ぐ場合にも、そこには時間が伴っている。それゆえに、「見る」よりも「聴く」という表現の方が自ずとしっくりくる。

 ところが不思議なことに、「見る」は瞬間的であるのに、人間の反応時間は、視覚に対してよりも聴覚に対しての方が短い。それが証拠に、スピード競技のスタートの合図はすべて音で出される。また映画などには、何かが爆発するとき、爆発音を爆発の瞬間の映像よりもわずかに遅く流すという手法がある。こうすることで視聴者は音と映像をほぼ同時に認識することができ、何が起こったのかを把握することができるという効果があるのだ。もし爆発音と爆発の映像をどんぴしゃ同時に流せば、視聴者はただ驚くばかりで何が起こったのかを把握できなくなってしまうのだ。

 時間を伴う感覚の方に速く反応してしまうということは、その感覚の方が生存の上で優先されているということではないだろうか。であるから聴覚を磨くことは生存意欲を磨くことにつながると言えば、それは言い過ぎやもしれない。ただ、じっくりと深く聴くという行為は、確かに外界に対する印象を変えると思うのだ。

 先日、ワタシの揚琴のコンサートを開いてくださったクライアントの方がすばらしいご感想をくださった。揚琴の音の余韻に耳を澄ましていると、会場にいる人が生み出す小さな騒音や戸外を走る車の音などがたいへんよく聴こえてきて、それらは本当はこんなに大きな音だったのかと気づかされて驚いた、とおっしゃったのだ。

 すべての音を深くていねいに聴くことで、その音の発信源の性質を再発見できたりもする。たとえば、何気なく聞き流しているパソコンの発信音が、よく聴けばいかに大きな音であり心身に悪影響を与えているか。機械類の振動音は、それよりも小さな音、それも自然の音と聴き比べることでその性質がよく「見えて」くる。それらは一定でありつづけるがゆえに、心身の自然な波長の流れを妨げている。
 一方、人間と同質のもの、すなわち自然が発する音を深く聴けば、その発信源は多大なる恩恵を与えてくれていることが見えてくる。良い音色による「理にかなった」演奏とは、その抽象であり代替物なのだ。

 さて、人間の耳にとっての音の大きさというものは相対的なものだ。常に大きな音の中に身を置いていれば大きな音が耳にとっての基準となり、そこでは微細な音はスポイルされてしまう。一方、常に自然界の音や楽器の微細な音に照準を合わせていれば、人間社会の多くの場面は騒音の渦であることだろう。どちらが心身にとって負担が少ないあり方なのだろう、と改めて問うてみる今日このごろ。

 とにかく、すぐ近所で一年以上やっている道路工事、一日も早く終わってくれ。ワタシはそんな工事をしてくれと頼んでないぞっ。

 おしまい。 
08.06.15 
遅咲きの白ツツジ
白ツツジ
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管理人について

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巴だ リョウヘイ
性別:
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職業:
揚琴・笛演奏屋 オカリナのセンセイ
趣味:
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自己紹介:
 
演奏活動範囲/全国の都心から山間地まで。
演奏場所/ホールからお座敷まで。オカリナは野外歓迎。
演奏目的/オープニングセレモニーから追悼演奏まで。
演奏形態/独奏から異業種間共演まで。
所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)

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特 技/晴れ男であること。

オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。

2018年、京都府下農村から大阪府下住宅街に移住。
今も雨乞い師見習い。
今も自然農見習い。
ノアのおとうちゃん。
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