#270 訓練オタク

#270　訓練オタク

　ウチの家は古民家、いわゆる古家を、リフォームせずにほぼそのまま使っているので、電気設備も昭和３０年代のままというものも多い。配線こそほとんどは壁の中を通してあるものの、多くの照明器具のスイッチは、器具からぶらりとぶらさがったヒモを引っ張るタイプのものだ。壁スイッチに慣れた現代人の中には、このヒモを邪魔に感じる人も多いと思う。

　が、ワタシはこのヒモスイッチを壁スイッチに替えようという気があまり起こらない。なぜかと言えば、訓練になるからだ。

　室内を歩いていて方向転換をしたとき、そうじをしているとき、ふと立ち上がったときなど、顔や頭にヒモが当たりそうになることが多い。そんなときワタシは、ぎりぎりの間合いで、つまり顔にヒモが当たる寸前にさっとからだをよじってヒモをかわすという訓練をしている。
　ヒモが顔に当たらんとする瞬間、それは近すぎて目にはほとんど見えない。気配を察知してかわすのだ。うまくかわして微動だにしないヒモを見て、「よし」とうなずく。
　前の家から数えて十五年以上つづけているこの訓練、今ではうっかりヒモに身体がふれてしまうことはほとんどない。

　なんのための訓練かって？
　・・・いったい、なんのためなのだろう？？？

　おしまい。　
08.06.18　

紫の蛍袋

2008/06/18 (Wed) 田舎暮らし TRACKBACK() COMMENT(1)