#275 燕

#275　燕

　大阪は八尾で暮らす人々をヤオ族という。中国の雲南省からの移民の末裔だといわれるが、真相は定かではない。そのヤオ族が暮らす地域のまっただ中でのアリエッタのライブが終わった。なかなか盛り上がり、揚琴まで運び込んで演った甲斐があった。揚琴ソロのコーナーでは雲南省生まれの「瑶（ヤオ）族舞曲」を演ろうかとも思ったが、長くなるのでやめにした。が、オカリナ + チェロ + 揚琴でトライした中国曲「燕になりたい」での取り組みは、この曲に伝承歌という生い立ちを超えた新たな命を吹き込んだと思う。不祥の作者の思いやいかに。
　で、このライブとは直接は関わりがないことかもしれないが、やっぱりどうしても書いておこうと思うことがある。

　野鳥が多い地域では、車が往来する道の上に鳥がたたずんでいることがままある。が、そこは翼を持った鳥たちのこと、車が近づけばさぁっと飛び立つので、車にひかれることはほとんどない。道の真ん中に鳥がいるからと急ブレーキを踏んでもそれはほとんど無駄で、かえってスリップや後続車の追突の危険を招く。
　ツバメ類はといえば、これは鳥の中でも最速で飛び、宙空で虫を補食するというもっとも敏捷な鳥だ。だから、ツバメが道の真ん中にいたからといって、急停車せずに徐行してそのまま直進するほうがいいと判断するのがいつものことだった。

　ところが、中には走る車に横から飛び込んでくる鳥がいる。のみならず、何かに気を取られて、車が接近しても路上から飛び立てずにはねられてしまう鳥もいる。ツバメも例外ではない。
　路上で仲間と遊んでいたのか、エサのやりとりをしていたのか、はたまた争っていたのか、仲間や家族に気をとられているうちに車が近づき、飛び立ったときにはすでに遅く、車の底部に激突してしまう。このようなことは、活動が活発になる梅雨の晴れ間や天候の変わり目に多いかもしれない。

　だから、運転中に道路上に野鳥を見かけたら、必ず減速して、後続車がなければできるだけいつでも停止できる体勢をとるように、すべてのドライバーにお願いしたい。とりわけ、何羽かで遊んでいる風なときは要注意だ。下手をすると、一度に複数の野鳥の命をうばってしまいかねない。

　はねられた二羽のイワツバメの上では、親兄弟が悲しそうに飛び回る。はねられたのは、巣立って間もない子供だったかもしれない。そんな光景を、誰にも体験してほしくない。６月２４日のアリエッタのリハーサルの帰り道、Ｓ市郊外の農村でそんな体験をして以来、「燕になりたい」を演奏すると悲しい光景を思い出してしまうことになってしまった。

　６月２７日のアリエッタは、ワタシとしては、こんな機会でもなければ自分では取り上げなかったであろう曲や編曲を演奏させていただいたことが収穫であった。企画者として会場との連絡などこまごまと動いていただいた珍坂快調にはもちろんだが、ピアソラの名曲「竹林でバチン」と「ULTRAMAN」的至福を提供いただいたゲストのタムケン師匠と、サティーワールドでワタシを困らせ、いや、磨いていただいたアレンジャーのモリサワ氏には特に謝したい（「ウルトラマンのテーマ」を演っていたときのワタシがいちばん楽しそうだったの声多数。やもしれぬ）。そして明るく音響の良いスペースをご提供いただいたダイニングキッチン・コモドのご主人・奥様には、濃やかなお心遣いをいただき快適に演奏に集中させていただくことができたことに多謝。ヤオ族、マンセー。

　おしまい。　
08.06.28　

たまには被写体に。アレンジャー／カメラマンのモリモリ。会場前で。

2008/06/29 (Sun) 自然・環境 TRACKBACK() COMMENT(2)