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揚琴、オカリナ & インディアンフルート奏者がつづるいろいろばなし。
音楽、田舎暮らし、自然・環境、時事、ほかいろいろ。
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#262 満月の夜にピアノが吠えた−6

 何事も、無心で行なったときがいちばんいい結果が出る。ということは、何かをするときに無心になれれば、成功したも同然だということだ。そこで、人は無心になろうとする。が、無心になろうとする思いがすでに雑念であるので、そこで立ち往生してしまう。
 ある古えの知恵者は、このようなときは、何かひとつのことに精神を集中するのが良いと言った。然り。演奏をするときには何に集中すればいいか。言うまでもなく「音」そのものだ。つまり、聴くことに集中できれば、演奏は成功したも同然だということになる。

 今便は、「聴く」という行為について K.J. がピアノを通して語るものについて。

 キース・ジャレット(以下 K.J. )の信じがたいと言うほかない即興演奏の展開は、当たり前だがすべて K.J. の耳によってコントロールされていた。無調の音楽はその場で諒解されやすいメロディーを伴わないだけに、ともすれば多くの素人衆に「でたらめ」だと受け取られかねない。が、あらゆる音階の外で奏でられる「メロディー」ははっきりと構造を持っていた。その証拠に、 K.J. はいくつもの無調の「即興の」メロディーを繰り返し弾いた。並の音楽屋では、あのような無調の長いメロディーをその場でソルフェージュ(音を聴き取ったり読み取ったりして音階やリズム形として表現すること)して繰り返すことはできない。しかも、それを両手で同時にやってのける技は、まさに人間離れしていた。
 過去に美しい旋律をさらに立体的に響かせていた三声部や四声部の驚異の即興もまた、無調に置き換えられていた。そこにも K.J. の「型」が浮き彫りになっていた。 K.J. の演奏は、人間の「聴く」という行為の限界を広げる行いでもあるとワタシは思う。

 K.J. の聴き方は一般人の聴き方とはずいぶんちがっている。健常な耳を持った人はだれでも、騒音の中である特定の音を聴き分けることができる。それはその音の音色と聞こえてくる方向を特定し、その音に意識を集中する能力を持っているからだ。で、美しい音を奏でる演奏家とはその集中力に長けている人なのだと思われている。が、実はそうではなく、演奏家の聴き方は、むしろ普通の集中とは逆方向の集中力を使うのだ。

 演奏家の音の聴き方は、その場の音全体を聴き取り、その上で特定の音を聴き取るというあり方だ。たとえば合奏の中で全員の音を聴く、その上で自分の音を聴く、ということだ。そうしてはじめて、全体の音と特定の音とのバランスをとることができ、今この瞬間の音と次の音との有機的連携を量ることができる。

 K.J. が客席の咳払いを気にすることを「神経質だ」と言ってきらう人がある。このたびもまた、K.J. が曲間に何度も「今のうちに咳払いしてしまってちょ」と呼びかけたにもかかわらず、大方の人が K.J. が何か冗談を言っているものだと取り違えて笑っていた。あるセットでは演奏が咳払いによって中断されたにもかかわらず、それはつづいた。演奏家は楽器から発する音を直接聴くのみならず、常に会場全体に響く音を聴きながら演奏する。だから、ピアノの反響音と咳払いは同等の重みをもって K.J. の耳に届いている。K.J. の類いまれなる耳が「鳴る前の咳払いの音」を感知してそれが演奏を妨げていたことを、おそらくほとんどの人は気づいていまい。遠く離れた客席で咳払いが出る瞬間に、 K.J. の指は反応している。昨年のコンサートでワタシが見たこのことは、再びはっきりと確認できた。

 このような聴き方は、もはやテレパシーやクレヤボヤンス(遠隔透視)に近い。それらが極限にまで押し進められると、予知のようにさえなる。これから起こることが、さっき起こったことのように感じられ、つまりは因果関係が逆転するのだ。ワタシにも経験があるが、集中力の極限でそれは起こる。人間にはゼロ・コンマ以下何秒かの内の出来事を感知して対応できる能力があると、ワタシは思う。K.J. の演奏は、その能力の結晶でもあるのだ。

 つづく。 
08.05.29 
アカツメクサ。他所で摘んできた花の種をまいてふやしました。
アカツメクサ

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巴だ リョウヘイ
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自己紹介:
 
演奏活動歴/揚琴、27年。オカリナ、16年。
活動範囲/全国の都心から山間地まで。
演奏場所/ホールからお座敷まで。オカリナは野外歓迎。
演奏目的/オープニングセレモニーから追悼演奏まで。
演奏形態/独奏から異業種間共演まで。
所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)

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特 技/晴れ男であること。

オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。

京都府下農村在住。
雨乞い師見習い。
自然農見習い。
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