#198 ばきばきっ

#198　ばきばきっ　

「ケンコウコツがゆがんでいます」だって。きのう十数年ぶりに整体を受けたときのことだ。すぐ近所にいい整体師さんがおられるので、不調の折りにはお世話になろうと思っていたのだが、とうとうそのときが来たのだ。

　暮れに始まった背中の激痛は、鈍痛となって上半身全体に広がり、呼吸と睡眠のさまたげになっていた。で、スケジュールの空きにいよいよ整体師さんのお世話になった。幸い先生はワタシの仕事をよくご存知で、心から応援してくださっていた。

　クラシックのオルゴールが流れる診療室のベッドにうつぶせになり、全身にくまなく指圧を受けた。
「うぐぐっ、効きますね」
「・・・」
「ぬおおっ、き、効きますねったら」
「・・・はい、ケンコウコツを入れます」
『ばきばきっ』　これはぜんぜん痛くない。
「はい、右も」
『ばきばきいっ』　痛くない。

　身体のゆがみは心をゆがめ、心のゆがみは身体をゆがめる。ワタシは、自らが作り出した カルマ（業＝悪因縁）が身体と心をゆがめるのだと思う。

　にしても、身体がゆがむと困ったことになる。まっすぐに立っていられず、気がつけば倒れている。いつのまにか歩道からはみ出して歩いている。いつのまにか社会からはみ出して生きている。タコの足がぐにゃりとゆがんで見える。それくらいならいいが、たとえば肩甲骨のゆがみは血流をさまたげ、痛みを生み、内臓に悪影響を与え、精神をゆがめてしまう。その影響は、周囲の人々にも及ぶ。

『ばきばきっ』のあとは、あら不思議、夜が明けたような爽快感。心に余裕が生まれ、ポジティブな考え方、寛容な心がよみがえってきた。と、どうだ。翌日には次々に仕事が入ってきたではないか。

「わたしの仕事も、患者さんを治そう治そうと意気込むほどうまくいきません。『自分』を横にどけておくことが大切」
「『慢心』を捨て、『自信』を持つこと」
「自分がよほどしっかりしていなければ、たくさんの患者さんから悪いものをもらってつぶれてしまいます」
　まだまだ精算すべきカルマが多いワタシは、深くうなずいた。

　おしまい。　
08.01.18　

１月１７日、今冬初めての積雪。

2008/01/19 (Sat) 雑　感 TRACKBACK() COMMENT(2)