#195 爆 発

#195　爆　発

　爆発するものはいろいろある。爆弾、ダイナマイト、ガス、粉塵、怒り、そして生命。岡本太郎は「芸術は爆発だ！」と言った。生命の爆発こそが芸術だという意味だ。その岡本太郎の巨大壁画『明日の神話』は、原爆が爆発する瞬間をイメージした作品だと言われる。その『明日の神話』をどこに恒久設置するかが争われている。

『明日の神話』が描かれたのは、氏によって大阪万博の『太陽の塔』が製作されたのと同時期だ。完成はしたものの、製作を依頼したメキシコのホテルが建設途上でつぶれたせいで、長らく現地で行方不明になっていた。２００３年に発見され、今は日本に保管されている。それを、近々公共の場に展示することになり、広島市、吹田市、渋谷区が誘致に名乗りを挙げたのだ。

　被爆地として展示の地にふさわしいとする広島。太陽の塔と対をなす作品だとする大阪万博公園を擁する吹田。岡本画伯製作のオブジェがあることと人通りの多さをアピールする渋谷。

『明日の神話』の誘致競争が報じられたとき、ちょうど岡本画伯の語録集を読んでいたところだったので驚いた。語録のいくつかを紹介したい。

『ぼくが芸術というのは生きることそのものである。人間としてもっとも強烈に生きる者、無条件に生命をつき出し爆発する、その生き方こそが芸術なのだということを強調したい。“芸術は爆発だ”』

『財産が欲しいとか、地位が欲しいとか、あるいは名誉なんていうものは、ぼくは少しも欲しくはない。欲しいのはマグマのように噴出するエネルギーだ』

『会ったことがない人、あるいは一生会う機会がないような人とも、自分の作品や発言を通してコミュニケーションしていくことなんだ。そこにぼくは生きがいを感じる』

『ぼくはこうしなさいとか、こうすべきだなんて言うつもりはない。“ぼくだったらこうする”というだけだ。それに共感する人、反発する人、それはご自由だ』

　天国の岡本画伯は、誘致競争に対してどう言っているだろうか。

　つづく。　

太陽の塔

2008/01/13 (Sun) アート・宗　教 TRACKBACK() COMMENT(0)