#927 ある歳時記 3

水の季節が明けようとしている。
今年も天がたくさんの水を届けてくれた。
水を得て、すべての生命が躍動する。
伸びるものは天を、或はマントル層を目指し、這うものは地平線を目指す。
そして飛ぶものはあたかも、灰色の雲の彼方の知られざる空域を目指すかのようだ。
過剰なまでの水の供給と強い日射しが交互にやってくるこの時節。
空で移ろうモノトーンのグラデーションが、心の有り様をいつになくよく見せてくれるような思いがある。
それは心の深奥を刺激して、それ自身を超えていけと挑発するかのようだ。

野草と野菜の区別が判然としないのがウチの自然農的田畑。
今年はそこここでカンゾウがかつてなく長身になった。




絶えかけていたバターナッツ、ここに悠々と復活。




冬野菜用地に所々青じそが顔を出す。




赤じそは青じそとサツマイモを従えて。




オクラと里芋とサツマイモなどなど。




オクラの花が咲くと本格的な夏の予感がする。




寿命を全うしつつあるレタスの前にこぼれ種のトマトが生えたので支柱を立ててやった。




トマトの支柱との結び方は、山里暮らし時代に近所のおじさんに教わった。




エゴマの自己主張がどんどん勢いを増してきた。




地這いキュウリもやっぱり天を目指すか。




限界知らずのゴーヤはもう、手がつけられない。




そこここにゴーヤが植えられている。




ここにもある。




野菜もこんな風に自然木を立ててつないでやると、不思議な風景が出来上がる。




なすがまま。




4m の支柱でも足りなくなってしまって困っているインゲン。




インゲンの蔓葉は夏の空にまことによく似合う。




オクラが作り出すリズムは何を表現しているのか。




エゴマの葉は大きいなあ。




鈴なりの予感させる青トマト。




カンゾウ。




里芋畑というほどのものでも。




秋にはここに黒豆が生い茂る、はず。




田んぼというほどのものでも。




今年の田んぼは苗が足りなくなったので仕方なくほぼすべてを一本植えにしたが、分けつはかつてなく進んだ。
田んぼ一面に広がってくれた蓮華のおかげにちがいない。




畦大豆と言ってもそういう種類があるわけではない。
田植えのついでに畦にずらりと播く大豆をこう呼び、窒素を土中に固定して田んぼに貢献するそうな。
初めて作ってみたが経過は良好。





これらの写真を撮った三時間前の炎天はどこへやら、さきほどから雷まじりの強い雨が落ちてきている。
このドラスティックな天候の変遷が、梅雨どきの魅力のひとつだ。
鳥の声で目覚め、ヒグラシの声で終う。
そんな日々が気に入っている。

梅雨空のモノトーンのグラデーションに接するとなぜ自分の心の深奥が刺激されるのか。
それを問うよりも、あたかも空模様に反映しているかのような心の動きを静かに追うことにこそ、この時節の意味があるはずだ。

　おしまい。
　

16.07.14 記　

こんなわくわくする空もそろそろ見納め。