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揚琴、オカリナ & インディアンフルート奏者がつづるいろいろばなし。
音楽、田舎暮らし、自然・環境、時事、ほかいろいろ。
どうぞ、ごゆっくり。
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幼少期、蓮華畑は幸せの象徴だった。
蓮華畑で駆け回り、身を投げ出し、花を摘んだ幸せなひととき。
それは共に在った母の姿を伴って、モノクロ写真の一枚に収められている。
あれはどこの蓮華畑だったか。
当時の京都の郊外にはどこにでもあったものだ。
記憶の奥底に眠る蓮華畑は、それらいくつかが組み合わさったものなのだろう。
もう一度蓮華畑に身を委ねたい…。
その叶わなかった夢が今、思いがけず実現しつつあるのだが…。




三年前、田んぼの中央に蓮華を植えた。
田んぼの脇の草地に自生した株をいくつか、畳一畳分ほどのスペースに移植したのだ。
少し離れた栗林から拾ってきた種も播いてみた。
わずかずつでも広がって、少しでも稲の助けになればいいなというくらいの思いで。
が、それらは昨年、早くも田んぼの三分の一を埋めるほどに広がった。
そして今年、蓮華は田んぼの七割を埋めた。





ある昼下がり、田んぼの蓮華に分け入って座ってみた。
はたしてあのときの幸福感がそこにあるだろうか。





わかっていたことだった。
そこにあったものは、今の自分のあるがままの心境だけだった。
雑然とした思いの集積と変遷。
それは幸福感とはほど遠いものだ。

が、視線を蓮華の草丈と同じくらいに低くしてみると、あのときの心境が垣間見える。
あのときの心境は、あのときの視線と不可分だったのだろうか。

そうして見た蓮華はいわゆる蓮華畑ではなく、それぞれの蓮華そのものだった。





風の音、蜂の羽音が蘇ってくる。
蓮華たちが風にゆらぎ、語りかけてくる。








すべてが今この瞬間に息づいている。
わたし自身もそうだった。
あのときは未来も過去もなく、「今」しかなかった。

「今」しかない、今この瞬間にのみ生きる──そのことの途方もない価値を、あの頃は理解していなかった。
そしてその価値を理解し始めた時には、すでに「今」に生きることができなくなっていた。
わたしはいつしか「明日」に生きるようになってしまっていた。
「明日」、それは形を変えた過去にほかならない。





過去に生きている—そのことを打ち消すかのように種籾を播く。
そうして、今ここに生きていることを確かめようとする。
明日のためにではなく、今生きている証しとして日々種を播き収穫する。
それは、過去も未来も持たず途切れることのない営みに加わることだから。

あのとき、一面の蓮華に包まれていたわたしは、もうひとつの存在にも包まれていた。
それは母だった。
わたしは背後に常に母の視線を感じ、声を聞いていた。
蓮華畑の幸福感、それは母と共にあればこそのものであったのかもしれない。

そして今わたしは、大地の視線を感じ、地球の声を聞こうとしている。
「永遠の今」を取り戻すために。
 おしまい。
 
16.04.25 記 

この黄色い花はあのときにはなかった。


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巴だ リョウヘイ
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揚琴・笛演奏屋 オカリナのセンセイ
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自己紹介:
 
演奏活動歴/揚琴、27年。オカリナ、16年。
活動範囲/全国の都心から山間地まで。
演奏場所/ホールからお座敷まで。オカリナは野外歓迎。
演奏目的/オープニングセレモニーから追悼演奏まで。
演奏形態/独奏から異業種間共演まで。
所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)

コンタクト方法/上記のホームページ(HP)の「Contact」のページからどうぞ。

特 技/晴れ男であること。

オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。

京都府下農村在住。
雨乞い師見習い。
自然農見習い。
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