#709 半端じゃない会

#709　半端じゃない会

　忘年会の季節だな。思ったんだけど、忘年会って呼び名は、こりゃまたユーモアたっぷりだな。往く年を忘れるって言いながら、実は往く年を振り返り、噛みしめ、仲間か一座かファミリーだかの絆を確かめて、来年をより楽しくしようっていう会なんだよな。それを「往く年を忘れる会」って呼ぶのは、洒落が利いていてすこぶる良いですな。

　我が町内会の忘年会は半端じゃない。午前中から公民館に集まって準備にかかり、昼食時から始まって夜っ引いて行なわれる。食材はみんなの持ち寄りで、中にはその辺で獲れたイノシシなんてのもある。忘年会当日のワタシは仕事だったので午後６時頃にようやく会場に到着したのだが、鳴り止まないカラオケ、空かないグラスと杯、止まらない箸。老若男女入り乱れて盛り上がりっぱなしだ。
「おおおーっ、巴ださん、よう来た、よう来た」
　はい。よう来ましたとも。ハイタッチ。

　出来上がっている場へ乱入するのが、ワタシは好きだ。なんの違和感もない。もしや常から出来上がっているのだらふか。駆け付けたったの一杯。マイクを奪うと、アカペラで「ウルトラマンの歌」を歌った。
「古～～～っ」
　はい。古いですとも。

　小中学生の女の子たちは、イマドキの歌を歌う。イマドキは、節回しとリズムがムズカシイ。なんだ、君たち、ぜんぜん歌えてないじゃないかっ。おじさんに任せたまえ。乱入して知らない歌をラップ風に歌って、一人盛り上がってひんしゅく。子供たちの楽しみを奪ってしまう悪いおじさんだった。最低だ。反省。なんでそんなことをしたのか、皆目憶えていない。

　次は、尻込みする慎み深い美人奥さまを引っ張り出し、「赤いスイートピー」をデュエットした。
「えーっ、あたしはいいですよ～」
　と言ってたはずなのだが、なんだよ、細部まで完ぺきに歌いこなしてるじゃないかっ。

　あれ、なんでワタシの蛮行を次々に披露してるんだらふ。

　幹事たる班長さんは、ひたすら歌っている。その奥さんも、ひたすら歌っている。半端じゃない。

　やはりひたすら歌っていたそうな田んぼ的師匠のKさんとは、餅つきの相談をした。自分で杵を作ったってか。半端じゃないな。

　さて、猪鍋のはずが、白菜と大根しか入ってない。ブリ大根のはずが、大根しか入ってない。教訓。忘年会へは早めに。が、Yちゃん（おっさんだが）があんかけカニ玉を作ってくれた。半端じゃない味だった。プロだかんな。
　中学生のHちゃんと小学生のCちゃんは、ふたりでスクランブルエッグを作ってくれた。ほんのり甘くておいしかった。

　なんだか、やなことを全部忘れちゃったよ。・・・あっ、そうか、忘年会って、そういう意味か。

　おしまい。　
10.12.12 記　

ふたたびヤブコウジ

2010/12/13 (Mon) 田舎暮らし TRACKBACK() COMMENT(0)