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揚琴、オカリナ & インディアンフルート奏者がつづるいろいろばなし。
音楽、田舎暮らし、自然・環境、時事、ほかいろいろ。
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#711 各々鹿々 2

「久しぶりの濃い霧だ。こんな夜は狼の目をごまかせるから、安心して遠出ができる」
「が、いつも思うのだが、こんな夜は『平らな石の道』でよく仲間が死んでいるのはなぜなのだ。それも、狼に食われたような痕もなく、まるで高い所から落ちたような死に方ばかりだ」

拍手[3回]


「あれは、どうやら『大きな光る目玉』にやられたらしい。『大きな光る目玉』は闇や霧の中から突然現われて、我々に体当たりして行ってしまうのだ」
「『大きな光る目玉』とは、どんな姿をしているのだ」
「熊よりも大きく、四つの丸い足で鹿よりも狼よりも速く走る。が、逃げれば追っては来ない」
「では、逃げずに立つ勇気ある者が撥ねられるということか」

「『大きな光る目玉』に気づかず、自分から突っ込んでいってしまったことがあった」
「なんだ、バカなやつだな。で、ケガはひどかったのか」
「いや、かすり傷だった。ヤツの身体には少し俺の血がついたが。歩くほどの速さで進んでいるヤツに気づかず、横っ面に突っ込んでいってしまったんだが、ぶつかった所は形が変わってしまった」
「思いのほか、ヤワいヤツなのだな」
「そうだ。恐るるに足りないヤツなのだとも」

「『大きな光る目玉』は、中に必ず人間が乗っている」
「人間は自分で走れないのか」
「自分でも走るが、人間は走るのが遅いので、『大きな光る目玉』に乗って移動するのだ」
「なぜ我々に体当たりしてくるのだ」
「『大きな光る目玉』は『平らな石の道』の上しか走れない。走り出したら急に止まれない。ジャンプもできない。だから、我々を蹴散らして前へ進もうとするのだろう」
「では、我々は野を自在に駆ける者の誇りに賭けて、負けることは許されないな」

「『大きな光る目玉』も中の人間も、殺した鹿を食べはしない」
「殺しても食べないのか。それは道に背いている」
「おまけに、死んだ者のことをかえりみる前に、『大きな光る目玉』にケガはないかどうかばかり心配する。『大きな光る目玉』がケガをすると金がかかるからだ」
「『金がかかる』とはどういう意味だ」
「他の者が休んでいるときも働かなくてはならなくなるということだ」
「つまり『大きな光る目玉』が動けなくなると、人間も食べ物を獲れなくなるということだな」
「その通りだ。だから『大きな光る目玉』には『保険』というものがかけられていて、『大きな光る目玉』がケガをしたら人間に金が払われるようになっている。だから、人間は『大きな光る目玉』が鹿にぶつかったら、鹿を助ける前に修理屋と保険屋に電話するんだ」
「今のお前の言葉を理解することはできないが、道に背く『大きな光る目玉』と人間に屈してはならないことはよくわかった」
「その通りだ。誇り高く自由に生きる我々鹿は、道に背く『大きな光る目玉』と人間に出会っても一歩も引いてはならないことを、子々孫々にまで伝えてゆかねばならない」

 霧の夜、各々鹿々が、かくかくしかじか語ったそうな。

 おしまい。 
10.12.15 記 
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鹿といえども
鹿といえども奥深いものが…。
恥ずかしながら最近見た鹿は 名古屋城のお堀に住んでる鹿なもんで…。
ママチ EDIT
at : 2010/12/24(Fri) 13:51:19
Re:鹿といえども
ママチさま

「名古屋城のお堀に住んでる鹿」ってどういうことなのか、とても不思議に思いました。
で、調べてみてびっくり。
水がない大きなお堀に「野生」の鹿が住んでいるというではありませんか。
「井の中の蛙」みたいで、かなりかわいそうな運命ですね。

巴だ 
at : 2010/12/24 13:58
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巴だ リョウヘイ
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職業:
揚琴・笛演奏屋 オカリナのセンセイ
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自己紹介:
 
演奏活動範囲/全国の都心から山間地まで。
演奏場所/ホールからお座敷まで。オカリナは野外歓迎。
演奏目的/オープニングセレモニーから追悼演奏まで。
演奏形態/独奏から異業種間共演まで。
所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)

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特 技/晴れ男であること。

オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。

2018年、京都府下農村から大阪府下住宅街に移住。
今も雨乞い師見習い。
今も自然農見習い。
ノアのおとうちゃん。
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