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揚琴、オカリナ & インディアンフルート奏者がつづるいろいろばなし。
音楽、田舎暮らし、自然・環境、時事、ほかいろいろ。
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#508 ハイライト

 収穫の喜びという言葉をよく聞く。農作の中でも準備から収穫までずいぶん日数がかかるお米作りでは、その言葉の重さはひとしおやもしれない。さて、田植えと稲刈りはお米作りのハイライトシーン。特に稲刈りは晴れの舞台だ。が、ワタシの初めての稲刈りは、抱いていたイメージとはずいぶんちがった状況で行なわれることとなってしまった。

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 秋晴れの下、乾いた明るい田んぼで、よく研がれた鎌で小気味良く稲を刈り進む、ひたいににじむ心地よい汗、はずむ会話、この上なくおいしい握り飯、時折やってくる赤とんぼに目をやり、カケスの声に耳を澄ます・・・こんな図を思い描いていたワタシ。が、数日前にまとまって降った雨のためにマイ田んぼはぬかるみ、稲刈りの当日もくもり空。一面の泥田では刈った稲をその場に置くことも叶わず、泥に足を取られながら行ったり来たり。夕暮れどきのうすら寒さが身に沁みた。

 とまれ、刈り取った稲を持ち帰って稲木に架け終わったときは、やはり相応の感慨があった。わずか二間半ほどの棒にまとめられた狭くて広い田んぼの恵み。これまでの労力に対して、ああ、たったこれっぽっち。が、それゆえに、感慨はいや増したように思う。

09.10.06いなき

 向かいのおばさんのアドバイスに沿ってワラでしばって干した稲は、ざっと200掴みくらいだった。お米作りの大ベテランのおばさんは、積み上げられた稲を見ただけでだいたいの収量がわかるようだ。「(稲木の横棒は)三本もいらんやろ」お米に換算すると、おばさんによれば「一斗・・・もうちょっとあるかなぁ」とのことだ。これらにまだ刈ってないもち米を加えると、二畝足らずのマイ田んぼの今年の収量は、およそ20kgってところに納まりそうだ。この少なさゆえに感慨はひとしおだというこの気持ち、わかっていただけるだろーか。

 そもそも、「最初は茶碗一杯分出来ればいい」との思いで始めたのだ。この収量であっても、望外の喜びだ。実際それは、自分たちはもちろん、近所の人々、そしてお米作りを勧めてくれた不耕起農法の先輩Kさんの想像をも超えていた。
 ちなみに、マイ田んぼは当地の「田んぼ銀座通り一丁目」にあるので、たくさんの人が通りすがりに見ていく。つまりはさらし者だ。素人が初めての田んぼで、どこぞで聞きかじっただけの不耕起とかいう農法で、機械も農薬もまともな肥料も一切使わず、いつも草ぼうぼうで、米なんか穫れるものかっ、てな世評にさらされつづけた。

 で、このたびの実りの秋。みなさんの見る目が少しずつ変わってきた。口々に「ええ穂が付いとる」「よう出来たなー」と言ってくださる。そこには少なからず驚きのまなざしがあった。が、ワタシとよく知ったご婦人は、終始淡々とマイペースで自分たち流のお米作りを完遂しただけだった。

 淡々と終えた稲刈り。稲はまだ稲のままで、「お米」でも「ご飯」でもない。おそらくワタシにとってのお米作りの最大のハイライト、つまりクライマックスは、田植えでも稲刈りでもなく、最初の一膳を食べるときなのだろう。立ちのぼる香りをじっくりと味わい、最初の一口を口にしたその時、涙腺に貯められた涙をすべて放出してしまって、つづく二口目を口に運ぶ前に干涸びてしまうんじゃないかと心配しているんだとさ。

 おしまい。 
09.10.06 記 
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巴だ リョウヘイ
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演奏活動範囲/全国の都心から山間地まで。
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演奏目的/オープニングセレモニーから追悼演奏まで。
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所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)

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特 技/晴れ男であること。

オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。

2018年、京都府下農村から大阪府下住宅街に移住。
今も雨乞い師見習い。
今も自然農見習い。
ノアのおとうちゃん。
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