揚琴、オカリナ & インディアンフルート奏者がつづるいろいろばなし。
音楽、田舎暮らし、自然・環境、時事、ほかいろいろ。
どうぞ、ごゆっくり。
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#417 土の重さ
土方仕事を始めて五日がたった。畑を作るために、一輪車でひたすら土を運ぶ。けっして楽しい作業ではないが、食べ物を作るためだからなんとかがんばれる。いい運動にもなるし、身体の効率的な使い方の修練にもなる。が、これが十年間つづくとしたら、ちょっとめげるだろう。死ぬまでつづくとしたら、運命を呪うだろう。人間は、先が見えない作業にどれくらい耐えられるだろうか。
土方仕事を始めて五日がたった。畑を作るために、一輪車でひたすら土を運ぶ。けっして楽しい作業ではないが、食べ物を作るためだからなんとかがんばれる。いい運動にもなるし、身体の効率的な使い方の修練にもなる。が、これが十年間つづくとしたら、ちょっとめげるだろう。死ぬまでつづくとしたら、運命を呪うだろう。人間は、先が見えない作業にどれくらい耐えられるだろうか。
ずいぶん昔のことだが、ベトナム戦争から二十数年が過ぎた現地の模様のドキュメンタリーを見た。戦争は無数の有形無形の傷跡を残す。ベトナム戦争の傷跡は、枯れ葉剤の後遺症が有名だ。が、このドキュメンタリーでは、あまり知られていない、深く残酷な傷跡が紹介されていた。
ベトナム戦争でアメリカ軍は、無数の爆弾を落とした。それらは次第に強力なものとなり、着弾した所にまるで月面のクレーターのような巨大な穴を開けた。ベトナムのジャングル付近の村々の周囲には、今もそのような空爆による穴が無数に口を開けているという。
ドキュメンタリーは、その穴のひとつを若い女性が埋めている様子を映し出していた。女性が埋めていた穴の直径は15メートル、深さは3メートルはあろうか。女性はたったひとりで、来る日も来る日も爆弾が吹き飛ばした土を一輪車で運び、穴に埋め戻していた。そうしないと、その地で作物を作ることができないからだ。
彼女の一家は、ただそこで暮らしていただけで何も悪いことはしていないのに、この気が遠くなるような作業をつづけさせられている。いったい穴はいつ埋め終えられるのか、見当もつかない。しかも、穴はほかにもたくさんある。彼女の一家が元の暮らしを取り戻すことは、おそらく一生かかってもできないだろう。それでも、家族の生活のためにやるしかないのだ。
彼女の表情から、やり場のない怒りと悲しみが伝わってくる。その怒りと悲しみは、しいたげられた人間すべてのもののように思う。死ぬまでつづくかもしれない不毛な作業に、若い彼女は本当に耐えられるのだろうか。耐えられたとして、誰が讃えてくれるだろう。
不条理な運命に使う労力と時間を他のことに使えば、ふつうに充実した毎日を送ることができるはずだ・・・人は置かれた境遇によっては、このような思いを持つことがある。たとえば、毎年大雪に襲われる地域では、誰もが「雪さえなければ」と言う。雪かきとは、天から降ってくるものを、ただここからそこへ移動させるだけの、何物をも生み出さない作業だ。しかも危険が伴う。
が、雪は自然現象だから、まだあきらめもつく。誰かが勝手に始めた戦争が開けた穴を一生のあいだ埋め続けさせられる人々に、われわれはかけるべき言葉を持たない。
こんなことを思い出したきょうは、畑作りのために一輪車で土を運び始めてまだ五日目だった。わけあってユンボで地所の隅に押しやられて山と積まれた畑用土を、シャベルで削っては一輪車に積み、むき出しの粘土層となっている元の場所に運ぶ。これまでに運び終えた土は、一輪車で二十五杯、たったの四畝分足らずだ。
作業中のワタシの頭の中には、いつも出来上がった畑の絵がある。その絵は、シャベルに込めるワタシの力を増し、土を乗せた一輪車の重さを軽くする。が、あれから三十年近くがたった今も土を運びつづけているやもしれないベトナムの彼女の頭の中には今、どんな絵があるのだろう。せめてそれが怨念に染まった絵ではなく、たわわに実る作物や家族が喜ぶ顔であってほしいと願うのは、ベトナム戦争で間接的であれアメリカに手を貸した国の国民として無責任に過ぎるだろうか。
彼女が細い腕で押す一輪車に盛られた土が彼女の心にどれほどの重みを与えているかを思うと、胸が苦しくなる。彼女が今も健康で、せめて少しなりとも収穫の喜びを味わえたことを祈るばかりだ。
明るい曲でしめくくろうかな。
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ベトナム戦争でアメリカ軍は、無数の爆弾を落とした。それらは次第に強力なものとなり、着弾した所にまるで月面のクレーターのような巨大な穴を開けた。ベトナムのジャングル付近の村々の周囲には、今もそのような空爆による穴が無数に口を開けているという。
ドキュメンタリーは、その穴のひとつを若い女性が埋めている様子を映し出していた。女性が埋めていた穴の直径は15メートル、深さは3メートルはあろうか。女性はたったひとりで、来る日も来る日も爆弾が吹き飛ばした土を一輪車で運び、穴に埋め戻していた。そうしないと、その地で作物を作ることができないからだ。
彼女の一家は、ただそこで暮らしていただけで何も悪いことはしていないのに、この気が遠くなるような作業をつづけさせられている。いったい穴はいつ埋め終えられるのか、見当もつかない。しかも、穴はほかにもたくさんある。彼女の一家が元の暮らしを取り戻すことは、おそらく一生かかってもできないだろう。それでも、家族の生活のためにやるしかないのだ。
彼女の表情から、やり場のない怒りと悲しみが伝わってくる。その怒りと悲しみは、しいたげられた人間すべてのもののように思う。死ぬまでつづくかもしれない不毛な作業に、若い彼女は本当に耐えられるのだろうか。耐えられたとして、誰が讃えてくれるだろう。
不条理な運命に使う労力と時間を他のことに使えば、ふつうに充実した毎日を送ることができるはずだ・・・人は置かれた境遇によっては、このような思いを持つことがある。たとえば、毎年大雪に襲われる地域では、誰もが「雪さえなければ」と言う。雪かきとは、天から降ってくるものを、ただここからそこへ移動させるだけの、何物をも生み出さない作業だ。しかも危険が伴う。
が、雪は自然現象だから、まだあきらめもつく。誰かが勝手に始めた戦争が開けた穴を一生のあいだ埋め続けさせられる人々に、われわれはかけるべき言葉を持たない。
こんなことを思い出したきょうは、畑作りのために一輪車で土を運び始めてまだ五日目だった。わけあってユンボで地所の隅に押しやられて山と積まれた畑用土を、シャベルで削っては一輪車に積み、むき出しの粘土層となっている元の場所に運ぶ。これまでに運び終えた土は、一輪車で二十五杯、たったの四畝分足らずだ。
作業中のワタシの頭の中には、いつも出来上がった畑の絵がある。その絵は、シャベルに込めるワタシの力を増し、土を乗せた一輪車の重さを軽くする。が、あれから三十年近くがたった今も土を運びつづけているやもしれないベトナムの彼女の頭の中には今、どんな絵があるのだろう。せめてそれが怨念に染まった絵ではなく、たわわに実る作物や家族が喜ぶ顔であってほしいと願うのは、ベトナム戦争で間接的であれアメリカに手を貸した国の国民として無責任に過ぎるだろうか。
彼女が細い腕で押す一輪車に盛られた土が彼女の心にどれほどの重みを与えているかを思うと、胸が苦しくなる。彼女が今も健康で、せめて少しなりとも収穫の喜びを味わえたことを祈るばかりだ。
明るい曲でしめくくろうかな。
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管理人について
HN:
巴だ リョウヘイ
性別:
非公開
職業:
揚琴・笛演奏屋 オカリナのセンセイ
趣味:
ほしい。
自己紹介:
演奏活動範囲/全国の都心から山間地まで。
演奏場所/ホールからお座敷まで。オカリナは野外歓迎。
演奏目的/オープニングセレモニーから追悼演奏まで。
演奏形態/独奏から異業種間共演まで。
所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)
コンタクト方法/上記のホームページ(HP)の「FAQ & Form」のページからどうぞ。
特 技/晴れ男であること。
オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。
2018年、京都府下農村から大阪府下住宅街に移住。
今も雨乞い師見習い。
今も自然農見習い。
ノアのおとうちゃん。
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