忍者ブログ
揚琴、オカリナ & インディアンフルート奏者がつづるいろいろばなし。
音楽、田舎暮らし、自然・環境、時事、ほかいろいろ。
どうぞ、ごゆっくり。
2024-031 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 prev 02 next 04
60  58  57  56  55  54  53  52  51  50  49 
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

#117 漁師としての一夜

 遠方での演奏の仕事は宿泊付きとなる。ワタシはどんなに高級でもホテルでは、まずぐっすり眠れない。24時間稼動している換気扇や空調の音、冷蔵庫の音、部屋によっては聴こえてくるエレベーターの音、もちろん外を走る車の音。これらは騒音というほどのものでははないとされているが、演奏前後の耳が鋭くなっているワタシにとってはかなりつらい騒音なのだ。秋の虫やカエルの声はいくら大きくても気にならないのにね。

拍手[1回]


 あれはいつのことだったか、土佐清水へひとりで向かった。地元の若きスタッフのみなさんとの打ち上げは盛り上がり、午前1時過ぎまでつづいた。終了後に律儀にも車で送ってくれたホテルに着いて、ワタシはたいへん安堵した。そのホテルには24時間稼動の空調もなければ、冷蔵庫もエレベーターもなかったからだ。おまけに二階のワタシの部屋の窓の下には港を望むというすばらしい立地で、潮の香りとしんとした空気は演奏の疲れをすっかり取ってくれるように思えた。

 ベッドで横になった瞬間に深い眠りに落ちた。
 で、どれくらい時間がたった頃か、突然の轟音にたたき起こされた。
 窓を開けて外を見ると、眼下の暗がりの中に何十隻もの漁船がいっせいにエンジンをうならせて出航していくのが見えた。ここは漁港だったのだ。時計を見ればまだ3時。出航の儀式は、その後も延々とつづいた。
 空調と冷蔵庫があるシティーホテルが恋しくなった。

 打上げでとなりにすわったスタッフのひとりは、TシャツにGパンのふつうの若者であったが、実は漁師の町土佐清水のバリバリの漁師だった。彼との会話を思い出したが遅かった。

「漁師って朝が早いからたいへんでしょ?」
「そうっすね、でも慣れればなんでもないっすよ」
「いつも何時に起きるの?」
「だいたい2時頃かな」

 え? 今・・・12時半じゃないか!
 盃片手にあまりにも平然と答えた彼は、あのどれかの船に乗っていたはずだ。
 明け方は明け方で、薄いカーテンを通してベッドまで射してくる朝日に起こされた。結局、起床予定時刻までほとんど眠れなかった。目をこすりこすりフロントに降りていってようやくわかった。そのホテルはどうやら、もとは漁師宿だったのだ。

 おしまい。 
鬼百合
鬼百合



PR
NAME
TITLE
COLOR
MAIL
URL
COMMENT
EMOJI
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
PASS
TRACKBACK URL 
おしらせ
お問合せはホームページの "FAQ & Form" からしていただけます。
太 陽 暦
02 2024/03 04
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
管理人について

HN:
巴だ リョウヘイ
性別:
非公開
職業:
揚琴・笛演奏屋 オカリナのセンセイ
趣味:
ほしい。
自己紹介:
 
演奏活動範囲/全国の都心から山間地まで。
演奏場所/ホールからお座敷まで。オカリナは野外歓迎。
演奏目的/オープニングセレモニーから追悼演奏まで。
演奏形態/独奏から異業種間共演まで。
所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)

コンタクト方法/上記のホームページ(HP)の「FAQ & Form」のページからどうぞ。

特 技/晴れ男であること。

オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。

2018年、京都府下農村から大阪府下住宅街に移住。
今も雨乞い師見習い。
今も自然農見習い。
ノアのおとうちゃん。
New Comments
※ 非公開を希望される方はその旨お書きください。
[09/10 水戸ふぢ]
[09/05 森下知子]
[07/17 Kitty]
[05/31 Kitty]
[04/17 Kitty]
[03/13 巴だ]
[12/08 栗美]
twitter
ブログ内検索
New Track Back
ようこそ
バーコード
"巴だ リョウヘイ" WROTE ALL ARTICLES.
PRODUCED BY SHINOBI.JP@SAMURAI FACTORY INC.
忍者ブログ [PR]