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揚琴、オカリナ & インディアンフルート奏者がつづるいろいろばなし。
音楽、田舎暮らし、自然・環境、時事、ほかいろいろ。
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#493 投げ入れ

 鳥取県倉吉市から天神川を遡上すると、間もなく右に三朝温泉郷を望んで、直に三徳山三佛寺に着く。夏でも冷気が漂う山中にひっそりと存するこの古刹は、千三百年ほど前に役行者が開いたとされる。本堂からさらに急峻な参道を登っていく途上、断崖に文殊堂、地蔵堂などの多くの建物が建てられている。その終点に位置する奇跡の建物を、とうとう目の当たりにする日が来た。

 奥の院までの参道は、修験道の修行の道にされてきただけあって、険しいと言うだけではまだ足りない、覚悟なき人には危険だと言っていい道なき道だ。この十年間で五人の参拝者の事故死者が出ている。そのような所に、信心と修行のためとは言え、千年も前にこれほどの建造物群を建てることができたとは、にわかには信じがたい。鐘楼に納められた鐘は重さが2トンあるそうだ。

 さて、三佛寺の奥の院である「投入堂(投げ入れ堂)」こそ、開祖役行者が法力によって断崖絶壁の岩窟に投げ入れたとされる奇跡の御堂だ。標高470mの、どう見ても人が近づけるとは思えない崖の中腹に、高さ10m、建坪約五坪の御堂はへばりつくように建ち、下界と参拝者を見下ろしている。本殿から伸び出した柱は崖のくぼみにちょこんと乗っかっているだけだ。御堂が納まっている岩の裂け目は、全体が大きくオーバーハングしており、本殿の屋根は裂け目の天井部分の内側にまさに張り付かんばかりに接している。

下の道路から見上げた投入堂
投入堂1
ズームイン
投入堂2
 いったい、誰が、どうやって、何のためにこれらを建てたのか。この問いに答えること自体は、それほど難しくはあるまい。修行僧や信者たちが熱狂的な信仰心によって、それこそ命がけで何十年もかけて造ったにちがいない。問題は、信仰と修行が、なぜこのような形に結晶したかということだ。

 ああ、投入堂。晴天の本日、何度見上げても、あんなところにあんな物を建てるのは不可能に見える。写真や絵はがきをじっくり見ても、呆然としてしまうばかりだ。ワタシは投入堂を前にして、この「不可能」の三文字こそが、当時の信仰のキーワードのような気がした。つまり、投入堂の建立は、絶対に不可能だと思われることを人々の信仰によって可能にする試みだったのではないかと直観したのだ。

 手つかずの大自然のただ中の断崖の裂け目にひっそりと納まっている投入堂は、遠目には、鳥の巣のような存在感ですらある。その場の材料を使い、その場の何ひとつとして傷つけることなく(柱はすべて岩の自然のくぼみを利用して立てられている。金具による固定は一切施されていない)、誰に何を誇るでもなく、ただそこに孤高に在り続けるその姿は、近づいたときに初めて、それが人間の創作美の極致を表現した物であることが見て取れるのだ。

 自然の一部として生まれ、苛酷な自然の中で自然と完全に一体化し、それでいてその姿は人間の持てる美意識と知恵と信仰心を余す所なく表現している投入堂。人を寄せ付けない自然と一体になっている姿と人間の美と知の極致とのコントラストは、人の至上の生き様そのもののを感じさせる。
 なお堂内には、最近まで七体の蔵王権現立像が安置されていた。

 ここまで、あたかも危険な修験道の参道を登って投入堂まで至ってきたかのように書きましたるが、実はこのたびはワタシは、この往復二時間の危険な修験道の参道を踏破するための心身の準備をしていなかったのでござりました。が、近いうちに必ず投入堂の懐を目指すのだとの強い欲求が湧き上がってきた。建築家や写真家などの多くの人を虜にしてきたという投入堂。ウチから車で片道5時間の道のりはややハードだが、その道程も参道の一部になっていくのやもしれない、とさ。

 おしまい。 
09.09.10 記 
三佛寺のご住職作の石仏
石仏

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演奏活動歴/揚琴、27年。オカリナ、16年。
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演奏目的/オープニングセレモニーから追悼演奏まで。
演奏形態/独奏から異業種間共演まで。
所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)

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オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。

京都府下農村在住。
雨乞い師見習い。
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