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揚琴、オカリナ & インディアンフルート奏者がつづるいろいろばなし。
音楽、田舎暮らし、自然・環境、時事、ほかいろいろ。
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#494 正 夢

 正夢(まさゆめ)と予知夢とはどう違うのかと思って調べてみたが、どうやらまったく同じことのようだ。が、正夢と言った方がなんだか情趣がある。良い夢であってもそうでない夢であっても、どこかしら人間臭さを感じる。予知夢という言葉は、即物的で、無味乾燥で、おまけに安っぽいオカルトの臭いがする。だから、先日ワタシが見た夢は、正夢と呼ぶことにしよう。

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 ・・・どこかの何かの施設の敷地の一角に、粗末な造りの建物がある。五坪ほどのスペースは、『古びたトタン板』がむき出しの天井に開けられた『半透明のトタン板で設えられた天窓』と『板張りの床』のおかげで、ずいぶん明るく温かくて落ち着いた空気をかもし出している。そこはどうやら、休憩所兼『図書室』のようだ。その不思議な部屋の中で、ワタシは誰だか知らない男性と静かに何かを語り合っていた・・・
 たったこれだけの夢だったが、温かな映像は心地良さとともに覚醒後も記憶に残ることとなった。

 ラジウムは放射線を放つ鉱物だ。ある条件下ではラドンという放射性の気体を発する。これらを含む温泉は放射能泉と呼ばれ、古くから湯治に使われてきた。世界でも有数の放射能泉である三朝(みささ)温泉は、一人の武士の夢から生まれたという。八百数十年前、源頼朝の家臣大久保佐馬之助が、前便で紹介した三徳山三佛寺(みとくさん・さんぶつじ)に詣でて源氏再興を祈願したとき、一匹の白い狼の命を救った。ある夜その狼が夢枕に立ち、三朝の楠の木の根元から温泉が湧き出ていると教えたのが、三朝温泉の始まりだと伝えられている。
 これぞ正夢なり。

 さて、前記の夢を見た日、ワタシはこの三朝温泉郷を訪れたのだった。三佛寺参拝の前日のことだ。夕刻に到着すると、早速ある温泉宿の地下に造られた湯殿へと降りていった。もちろん、源泉掛け流しのラジウム温泉だ。厚い木枠の湯船の底には、何枚かの分厚い石板が敷かれている。そのすき間から、時折ぽこぽこと泡が浮かび上がってくる。総石造りの床面はほんのりと温かい。天然の床暖房だ。
 ずいぶん湯温が高かったのでたっぷりの水で埋め、ようやくゆっくりと浸かった。で、頭上を見上げて驚いた。天井の中央部は煙突状の吹き抜けになっていて、その内部は『古びたトタン板』でおおわれており、その先端には、なんと『半透明のトタン板で設えられた天窓』があるではないかっ。

 出発の朝に見た夢とこの湯殿の光景との一致点は、トタン板と天窓というふたつのキーワードだけだ。が、それらは夢の中でもっとも鮮明な記憶だった。それゆえに、湯殿の天井を見上げたときに即座に結びついたのだ。夢の部屋は図書室であったのに一冊の本も憶えていないし、話し合っていたのが誰で(白い狼でなかったことは確かだ)、何を話していたのかも定かでない。ただ、天井と天窓の様子、そしてほんのり温かな空気だけが鮮明だったのだ。
 ・・・あれっ、でもそういえば、その温泉宿の一階ロビーには『板張りの床』の古びた『図書室』があって、そこでしばし読書したっけ。う〜む。

 夢の解釈などにはさしたる意味はないという説を、これまでは支持してきたワタシ。が、朝に見た夢が夕方に現実のものとなった体験をすると、少々考えも変わらざるを得ない。
 ワタシの心身の深い所が、この大いなる自然の恵みである温泉を求めていたのだらふか。それは、ワタシが病んでいるゆえだらふか。それとも、温泉行はワタシの無意識が解き放たれて現われた本能なのだらふか。

 とまれ、癒しの温泉郷から厳しき修験道の三佛寺参拝へとつづいた道程は、まさしく古来の自然と人との関わり方を体感させるものであったことだけは確かだったとさ。

 おしまい。 
09.09.11 記 
買ってきた三佛寺投入堂のポスター。
「恐怖の絶景 千年の時を超えて」と書かれている。
投入堂ポスター
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管理人について

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巴だ リョウヘイ
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職業:
揚琴・笛演奏屋 オカリナのセンセイ
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自己紹介:
 
演奏活動範囲/全国の都心から山間地まで。
演奏場所/ホールからお座敷まで。オカリナは野外歓迎。
演奏目的/オープニングセレモニーから追悼演奏まで。
演奏形態/独奏から異業種間共演まで。
所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)

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特 技/晴れ男であること。

オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。

2018年、京都府下農村から大阪府下住宅街に移住。
今も雨乞い師見習い。
今も自然農見習い。
ノアのおとうちゃん。
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