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揚琴、オカリナ & インディアンフルート奏者がつづるいろいろばなし。
音楽、田舎暮らし、自然・環境、時事、ほかいろいろ。
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#153 二匹のミミズが教えたもの

「雨上がりの大地に陽光が射し、陽の光に誘われて土の中から一匹のミミズが顔を出しました。すると、すぐとなりからもう一匹のミミズも顔を出しました。『やあ、どこかで見た顔だね』『やあ、君こそどこかで見た顔だね』それらは、実は一匹のミミズの頭としっぽだったのです(笑い)」
 ハンガリー生まれの指揮者フェレンツ・フリッチャイの、オーケストラとのリハーサルでの言葉だ。いったい何を言いたいんだろう?

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 琵琶湖ホールの資料コーナーは、音楽関係の映像資料がとても充実していて、誰でも無料でブースで鑑賞できる。
 先日ここで、今は亡き名指揮者たちのリハーサルの記録を3本たてつづけに見た。

 フェレンツ・フリッチャイは、南ドイツ放送交響楽団とのリハーサルを、まさに渾身の力で進めていた。フリッチャイが指揮するのは、スメタナ作曲「交響曲モルダウ」だ。指揮を始めるに当たって彼は、この曲がチェコの美しい自然を表現した曲であり、チェコ人の心の歌であることを、楽団員に向かって静かに、しかし熱く訴えた。そして、この曲の冒頭部分を演奏する際に、まず次のように語った。

「この曲の冒頭は、モルダウ川の最初の一滴が流れ出し、それらが集まって、次第にひとつの流れになってゆく様子を表現しています。そしてこの部分の演奏は、その流れがいずれは大きな流れとなってゆくことを予感させなければならないのです」

 モルダウの冒頭は、2本のフルートの対位的なメロディーが中心になって進められる。ふたりの奏者は、音量と音色のバランスとフレージングを、何度も何度も調整させられた。それらの音は、別々に流れながらも一体でなければならなかった。

 冒頭のミミズの話は、このときに話された彼が創った例え話なのだ。この例え話につづいて、フリッチャイはこう言った。

「二匹のミミズだと思っていたものが、実は土の中でひとつにつながっていた。2本のフルートの関係は、そんなイメージなのです」

 全楽団員が聞き入っている。フリッチャイのすべての言葉と身振りは、繊細な感性と燃えるような情熱で満たされている。彼が何かひとことアドバイスしたり歌ってみせたりするたびに、2本のフルートの音がはっきりと変わっていくのが手に取るようにわかった。

 フリッチャイは若くして病に冒された。そして二度の手術後の最悪の体調を押して行なわれたこのリハーサルの二年後に、49才で亡くなった。収録のときにモルダウの解釈を語る中で、彼は思わずこうつぶやいた。

「生きていることはすばらしい。本当にすばらしい」

 おしまい。 
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管理人について

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巴だ リョウヘイ
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非公開
職業:
揚琴・笛演奏屋 オカリナのセンセイ
趣味:
ほしい。
自己紹介:
 
演奏活動範囲/全国の都心から山間地まで。
演奏場所/ホールからお座敷まで。オカリナは野外歓迎。
演奏目的/オープニングセレモニーから追悼演奏まで。
演奏形態/独奏から異業種間共演まで。
所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)

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特 技/晴れ男であること。

オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。

2018年、京都府下農村から大阪府下住宅街に移住。
今も雨乞い師見習い。
今も自然農見習い。
ノアのおとうちゃん。
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