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揚琴、オカリナ & インディアンフルート奏者がつづるいろいろばなし。
音楽、田舎暮らし、自然・環境、時事、ほかいろいろ。
どうぞ、ごゆっくり。
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祝島には、自給自足・循環型生活の島という顔もある。
周囲12km、全周が急斜面の祝島では、集落は島の東側に集中している。
一方けっして広くない農地は、主に西側と南側に拓かれている。
集落から南側へ歩いて一時間の所にある有名な棚田へは、途上が崖崩れで通行止めのため行けず。
西側の農園は、貸し自転車で行ってもかなりへんたいな距離。
で、ワタシの今回の旅は、島で宿を取れなかったゆえの日帰り日程であったため、東側限定にならざるを得なかったのが嗚呼残念。

拍手[10回]


さて、ワタシと同道者のよく知ったご婦人は小学校を後にし、昼食を摂りに港方面へ戻った。
港のすぐ近くの食堂ののれんをくぐってみると、十席も無い小さな店内に、手作りグッズや原発反対的本、DVD、チラシなどがたくさん置かれている。
ベンチシートに腰掛けて冷たいうどんが出来上がるのを待っていると、となりに初老の男性が腰掛けた。
白いYシャツに眼鏡という出で立ちの、役場の職員風な方だ。
お話し好きのようで、ワタシたちにどこから来たのかなどと話しかけてこられた。
そのうち、この方が役場の人ではなく、さっき行ってきたばかりの小学校の校長先生だと知ってオドロイタ。

「漁師さんたちは、ここの『海底』は生きている、決して殺してはならない、と言うんです」
前便のこの言葉は、祝島小学校校長先生のものだったのだ。
よく耳にする「海は生きている」という漠然とした表現ではなく「『海底』は生きている」というより具体的な表現にはへんたい説得力がある。

上関、祝島付近の美しい海は、他に例を見ない豊かさから『奇跡の海』と呼ばれている。
が、表面の美しさだけを見てはならない。
周囲の山、海流、そして海底があって、海藻が繁茂し魚や数えきれない生き物が育って、この『奇跡の海』がある。
「海と山さえあれば生きていける」と言う誇り高き、真の知恵ある人々がある。
先生の話を聞いてワタシはそう悟った。

この奇跡の海はけっして金には代えられないと言い放った祝島と上関の人々。
今も電力会社一味、推進派と戦い続けている。
「戦いはきれいな話ではない。もっと島の人の話を聞いてみればいいですよ」と校長先生。
が、これも今回は叶わなかった。

さて、校長先生のお招きに甘え、我々はもう一度小学校を訪れた。
広い木張りの廊下をぎしぎしときしませて歩き、レトロで味がある作りの校舎の中を見学させていただいた。

祝島小学校廊下


児童は現在たった七名しかいないが、最盛期は五百人いたと聞きまたオドロク。
三階の窓から、上関原発が真正面に見えた。
あの魔物は、ここで学ぶ子どもたちのことなど、爪の先ほども考えていないのだ。

祝島小学校教室


海があり、海底があり、海藻が育ち、魚がいて、ひしめく瓦屋根の下では人々が営々と生きている。
そのすべてが眼下に見下ろせた。
ところが、目線を一里先にやると、魔物が巣食っている。
この長い時が育んだ有機的結合が作り出している島の風景と、文明が生んだ無機的物質の権化たる灼熱の魔物が織りなす不可思議な情景を静かに見つめたとき、怒りではなく、ある種の高揚感が沸き起こった。
その高揚感はおそらく、島の人々と同じ目線から魔物をにらんだことと、多少なりとも人々の暮らしにふれたことによって生まれた、ワタシからの一方的な仲間意識であったと思う。
それは浅薄なものであることはちがいないにしろ、これまで心のひだの影で蠢いていた傍観者特有の物見の虫を、勢い良く掃き出してしまう力だけはあったようだ。

17:05の船で室津へ戻った。
祝島では、露地を歩き、うどんを食べ、小学校を訪れ、校長先生のお話を聞き、海岸の防波堤の影で昼寝をしただけの我々。
が、早くも芽生えたかすかな郷土意識。
その祝島は、貧しかった。
数えきれぬ空き家、高齢化率70バーセント、廃校寸前の小学校、たくさんのやせた猫、離島故の不便さ、厳しい自然環境、耕地不足、水不足…
こうした現状が、島の人々が上関原発建設の見返りの十億円の受け取りを、海を守るために拒否し続けたことと大いに関係があることを思うとき、また人々のフレンドリーさと屈託のない笑顔に接したときに、真の知恵と誇りに対し最大限の敬意を表すると共に、言い知れぬやるせなさを覚える。
なぜこの国は、この人たちが自分たちが望む暮らし(それはささやかで、誰にも迷惑をかけることはなく、何ものをも必要以上に傷つけることがないのだ!!)を維持するための最低限の環境すら奪ってしまおうとするのか。

が、『奇跡の海』に触れ、潮風の香りを嗅ぎ、恵みをお腹いっぱいいただいたことでワタシは、やるせない気持ちに沈むのではなく、むしろこの海の一員になったような晴れ晴れとした心持ちになった。
のみならず、実は世界のすべての人々が、この海の一員であることに気付いた。
なぜなら、海はひとつなのだから。

室津で、お商売をしているあるご主人の話を聞くことができた。
「自分は商売をしているから、これまで原発に対する立場を表明することはできなかった。けれども、311以降、それまで言いにくかったことをかなり自由に言える雰囲気になってますよ」
とのことだった。
陰ながら原発に反対してきた様子のご主人は、こう続けられた。
「(海は)一度失ったらもう二度と返らないですからね」
ワタシは、このご主人の手による海の幸のお料理をいただいたそのときから、きっとこのように考えておられると確信していた。

「守ること」は「作ること」よりも軽視され敬遠されてはいないか。
が、「永遠」に属するものを守ることは、間違いなく「創造行為」であるとワタシは思う。
なぜならそれは、すべての創造の源泉を守ることだからだ。
ただ、その守るという行為は常に、人間の刹那的欲望との戦いという様相を呈するのが残念でならない。

 我々、人は島の暮らしを何から守るのか。
 それは、常に人からだ。
 では、海を侵し汚す人とはどこにいるのか。
 それは、常にワタシの中に潜んでいる。

こうして、始まったばかりのワタシと祝島・上関との付き合い。
祝島の露地に並ぶ家の前で立ち話になり「コーヒー入れる所だから飲んでいかんかね」と言ってくれたおじいさんとおばあさん。
遠慮せずにいただいていけばよかったな。
また会いたいです。

ウチから車と船で片道正味8時間。
祝島はワタシにとっては簡単に行けるところではない。
が、今はすぐそこにあるような気がしている。
自分の心の中という近くて遠い所に浮かんでいて、ワタシの前途を照らし、祝ってくれているのだ。

 ※ 祝島の日々

 ※ 祝島に帰農して島で初めての豚の放牧と有機農法を始めた氏本長一さんのブログ

 ※ 上関原発建設中止の私的要望書。原発震災のひと月前に書かれた。

 ※ 現地から発したつぶやきと写真のまとめはこちら。


 ひとまずおしまい。 
11.08.03_04 記 


祝島小学校の児童がまとめた「祝島宣言集」のひとつ

祝島小学校宣言集


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エピローグ
折しもワタシが祝島を訪れた8月1日は、上関原発計画の中止を求める署名を、「祝島島民の会」をはじめとした呼びかけ団体が東京の経済産業省を訪れ、経済産業大臣宛てに提出された日でした。
署名は最終集約で100万9527筆となったそうです。
その模様はこちら。 → http://bit.ly/oGnGfU

2日には上関原発がある島(半島に見えるが島なのだ)を車で一巡りしましたが、途中で中国電力の車と何台も行き会いました。
「原電を妨害する人は上関町に来ないで!」との看板(http://twitpic.com/60d152)に出会ったのもこのときです。

 巴だ
巴だ EDIT
at : 2011/08/05(Fri) 02:13:22
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巴だ リョウヘイ
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職業:
揚琴・笛演奏屋 オカリナのセンセイ
趣味:
ほしい。
自己紹介:
 
演奏活動範囲/全国の都心から山間地まで。
演奏場所/ホールからお座敷まで。オカリナは野外歓迎。
演奏目的/オープニングセレモニーから追悼演奏まで。
演奏形態/独奏から異業種間共演まで。
所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)

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特 技/晴れ男であること。

オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。

2018年、京都府下農村から大阪府下住宅街に移住。
今も雨乞い師見習い。
今も自然農見習い。
ノアのおとうちゃん。
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