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揚琴、オカリナ & インディアンフルート奏者がつづるいろいろばなし。
音楽、田舎暮らし、自然・環境、時事、ほかいろいろ。
どうぞ、ごゆっくり。
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今便は、過去のふたつのエントリの続編となっている。

「ふるさとはいくつあってもいい。」
当ブログ #335「源流行 2」で書いた一言だ。
わたしのふるさとのひとつから仕事の依頼が入ったのは、去る五月のことだった。
毎冬1mを超える雪に覆われるその村に、わたしは揚琴を奏で音楽を作るための「生きた静寂」を求めて移り住み、十二回の冬を越した。
その地を離れて十年目の今年、電話をくださったかつてのわたしの大家さんは、当地のすたれている盆踊りと歌を復活させ後世に伝えるのだと力強くおっしゃった。
その大切なワークのお手伝いが、ご依頼の仕事の内容だった。
復活開催する盆踊りの場でその村ととなり村の歌の名手のおばあさんたちの歌を録音して記録してほしい、できればオカリナも吹いてほしい、と。
で、昨日8月8日がその日だった。



復活盆踊りは、澄んだ流れの川と紅葉が美しい山を目前にする公民館前のこじんまりした広場で行なわれた。
近所の人と帰省者が中心のせいぜい二十人くらいの人出だらふと思いきや、舞鶴でのレッスンを終えたその足で長駆駆けつけると、なんと先日から「ワークキャンプ」なる田舎暮らし体験スクールで当地周辺に滞在している二十名ほどの大学生、民族衣装に身を包んだブータンの留学生たち、その先生方、関係者、屋台の人、報道関係者、犬、猫、蚊 などでずいぶんにぎわっていてびっくりした。 山間の行き止まりの集落につき通りすがり、素浪人は皆無。





 
 

わたしが当地で暮らす間にお世話になったおじさんやおばさんの多くは、すでに今生では二度と会えない世界におられる。
いちばんお世話になり、わたしたち夫婦を影に日向に支えてくださった斜め向かいの家のおじさんも、五年前に旅立たれた。
#689「驟雨」で、このおじさんのことをこう書いた。

「(雪を)急いで掻こうがゆっくり掻こうが、結果はほとんど変わらない。万事いたずらに急ぐことは、この美しくも自然厳しき地にはそぐわない。自然に逆らうことは、この地で暮らす楽しみを最も損なう生き方なのだ。そんなかけがえのない教訓を「まあ、ぼちぼちやっておくれ」の一言としわくちゃの笑顔だけで伝えてしまうことができる人を、ワタシはほかに知らない。」

さて盆踊りの日、村のみなさんと久しぶりに旧交を温める中で、このおじさんの息子さんと出会うことができた。
おじさんが亡くなったことを契機に何十年ぶりかで街中からこの地に帰り、誰もいなくなっていたおじさんの茅葺きの家で再び暮らし始めた人だ。

思いやり深く、和を大切にし、かつ自分の考えをはっきり表明することを厭わず、行動力があり、働き者で、「ていねい者」で、人一倍明るくてユーモアたっぷりなおじさんは、村の内外でとても人望が厚い人だった。
奥さんを亡くされたとき「愛とは与えることだと気づかされた」とごあいさつされたが、わたしから見ればおじさん以上に人に多くを与えている人は稀だと思えた。
その息子さんが、冗談軽口が大半のわたしとの会話の中に挿んだおじさんのエピソードに、胸を射抜かれた。

「おやじは人当たりが良くやさしい人だとみんなが言ってたが、自分にとってはこの上なく厳しく恐いおやじだった・・・が、「なんでもかんでも自分が自分がと独り占めしようとしてはいかん、楽しみや喜びをみんなで少しずつ分け合うことが幸せな暮らしなのだ」と言ってた」

終演後の照明が落ち始めた広場の片隅でこの話を聞いているとき、その口調といいまなざしといいおじさんにそっくりだった彼の様子から、あたかも今ここでおじさんが話しているような錯覚に落ち入ってしまった。
彼はこう続けた。
「今自分がここへ帰ってきてからは、どこへ行ってもあの S の息子だということでみなさんに心を開いてもらえる、そのことがおやじが残してくれた何よりの財産だ」


この村のあるおばさんは、わたしがまだ住んでいた頃、早くにだんなさんを亡くされたこともあり、一人で何枚もの田んぼを切り盛りされていた。
日が暮れても腰まで泥田に浸かり、「こうやって田んぼを平にしてやると米がようできますのやで」と言いながら、木製の手道具一本で広い田んぼの泥をていねいに均一に慣らしておられた姿が今も目に浮かぶ。
豪雪の年も、村はずれの杉林に囲まれた茅葺きの家で、たった一人で越冬されていた。
おそらくもう八十半ば過ぎだろうおばさん、きのうは「まだ田んぼやってまっせ、一枚だけやけど」と言って微笑まれた。
おばさんの息子さんも、先年街中でのお商売を切り上げて帰って来られていた。
洗練された物腰とユーモアたっぷりで話し上手なこの方、今はのびのびと農業を楽しんでいるとのことだ。
「子どもの頃手伝わされたことは何もしたくないし、実際してこなかったから田舎の暮らしのことは何もできなかった。だから、表向きはUターンやけど現実は I ターンや」


さて、再び #335「源流行 2」からの引用。
これは、これまたたいへんお世話になった別のおじさんのエピソードだ。

「お店の向かいの丘の上の「そんなことをしたらバチが当たる」が口ぐせのおじさんは、八十六歳におなりで先日奥さんを亡くされたが、全然変わっておられなかった。ユーモアも健在。「最近ここはええ名前をもろた。『限界集落』と言うんや」

この日、盆踊りに先立って行なった短いオカリナ演奏の合間に挿んだ MC で、わたしはこのエピソードを披露して、おじさんの思いを引き継ぎ、広く伝えるべくこう結んだ。

「…こう話されたおじさんは、この村が限界集落と名付けられたことでずいぶん寂しそうだったし、またちょっと怒っている風でもあった。わたしも限界集落という言葉は嫌いだ。人にはもちろん誰にでも限界はあるし、もしかすると村にも限界はあるのかもしれない。が、何が限界かなどということは他人から言われて決めることではないし、まして人に向かってお前はもう限界だと決めつけるなどもっとのほかだと思う。限界を決めることができるのは神様か、せいぜい自分で決めることができるだけだ。限界集落などという呼び名は KUSOKURAE だ」

そしてこう続けた。

「自分は今、この地で経験したこと、学んだことを生かして、別の地で新しいふるさとを、少しずつ作っていっている」


この村の人たちの魅力のひとつは、辛いことがあった時こそ冗談を言い笑い合っていることだ。
そうして和を保ち、多くの艱難辛苦を乗り切ってこられた。
それは「努力」などという薄っぺらでちっぽけなまやかし的営為ではない。
あるがままの環境、現実と自分たち自身を真摯に見つめ、苦しみつつそれらを受け入れ、きわめてリアリスティックに対処してきたというプロセスだった。
そうして林業全盛期だった昭和中期があったし、この現在がある。
その現在というキャンバスには、去って行く人々と戻ってくる人々、新たにやってくる人々が織りなす構図が鮮やかに描き出されている。
それはまた、この村の未来絵図でもある。
その絵図からは、過疎と高齢化と政治的経済的逆風にさらされ続けているこの村の現在もまた、住む人、関わる人に和を与え、真の幸せに導くプロセスの途上にちがいないことが見て取れる。
昨日この地を訪れて新旧の恩人友人たちと言葉を交わしたわたしは、何のためらいもなくこう思う。
 おしまい。 

15.08.09 記 


 追 伸:

わたしが十六年前に初めてオカリナ教室を持たせていただいたのは、この地でした。
当時の生徒さんには今もレッスンを続けてくれている人もいます。
この日はお手伝いしてもらったり、また久しぶりに再会したり、何よりこの地で再びオカリナを演奏できて、その意味でもスペシャルな日になりました。
この辺のことについては、改めて記事にしたいと思ってます。

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管理人について

HN:
巴だ リョウヘイ
性別:
非公開
職業:
揚琴・笛演奏屋 オカリナのセンセイ
趣味:
ほしい。
自己紹介:
 
演奏活動歴/揚琴、27年。オカリナ、16年。
活動範囲/全国の都心から山間地まで。
演奏場所/ホールからお座敷まで。オカリナは野外歓迎。
演奏目的/オープニングセレモニーから追悼演奏まで。
演奏形態/独奏から異業種間共演まで。
所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)

コンタクト方法/上記のホームページ(HP)の「Contact」のページからどうぞ。

特 技/晴れ男であること。

オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。

京都府下農村在住。
雨乞い師見習い。
自然農見習い。
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