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揚琴、オカリナ & インディアンフルート奏者がつづるいろいろばなし。
音楽、田舎暮らし、自然・環境、時事、ほかいろいろ。
どうぞ、ごゆっくり。
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#685 収穫祭

 稲木に掛けた今年のお米の一部が、ようやく乾いた。で、きのう、収穫祭の日の朝から脱穀を始めた。といってもその日に試食する分の二合だけだ。脱穀機を引っ張り出さず、手でしごいて籾をワラからこそぎとった。二合の玄米を取るには、ちょうど四合の籾が要る。作業は1時間半かかった。

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 友人的陶芸家Aさん作「ぶんぶく土鍋」で炊いたたった二合の新米を持って、よく知ったご婦人と二人でKさん宅へ向かった。囲炉裏の炭のあたたかな炎と香りと、娘のCちゃんと息子のUちゃんの元気いっぱいのごあいさつが迎えてくれた。そして、おとうさんのKさんとおかあさんのN子さんの手料理が次々と並んだ。メインは鴨鍋だっ。収穫祭だっ。鴨鍋だっ。収穫祭だっ。ビールだっ。

 乾杯して、初めに口にしたのは、「おくどさん」で薪で炊いたKさんちのお米だった。不耕起栽培を始めて五年目のKさん、今年も会心の出来。充実の味。香りが良い。つやがある。張りがあるのにやわらかくて粘りがある。甘い。美味い。おかずがいらない。というより、おかずがご飯の味をこわしそうで食べたくならない。

 次に、ウチのお米をみんなで食べた。低水温で弱って黄色くなってしまった苗が、かろうじて育って、なんとか少しだけ実を結んだお米だ。・・・う〜む、少しぱさつき感があり、甘みが少ない。が、極めてクリアーな味で、余分なものが一切感じられないのが快感だ。食べてみて、今シーズンは十分に手をかけられなかったことがいっそう悔しく、残念に思えてきた。

 と、Cちゃんが言った。
「巴ださんのお米の方がおいしい」
 泣かせるじゃねーか。ウチの子にしたいよ。よく知ったご婦人が言った。
「そんなことないよ。Cちゃんちのお米の方がおいしいよ」
 が、Cちゃんはウチのがおいしいと言ってくれる。やっぱり連れて帰ろう。
 ウチのお米を口にしたKさんは、ひとり押し黙っている。横でどっちのお米がどうのこうのと盛り上がるみんなに混じらず、茶碗を持ち、箸を構えたままで固まってしまっている。よく見ると、泣いておられる。

 二年前の秋。Kさんちのお米を一口食べたワタシは、その香ばしさと甘みとクリアーなのどごしに衝撃を受けた。また、その生命力あふれるお米を食べたことでこの大地と直接つながったような気がして、胸がいっぱいになり、KさんとN子さんの前でつい泣いてしまったのだった。それが、二年経ち、今度はKさんがウチのお米を食べて泣いちゃった。

「いろんなことが頭をよぎって・・・」
 五年間、周囲の中傷批判にさらされ続けながら、自分の理想とするお米作りを貫いてきたKさん。「理想郷のための理想の田んぼ」で育まれた一握りの種籾が、仲間の手によって育てられ、自分の元に帰ってきたのだ。その感慨は、二年前のワタシ以上だったに違いない。
「おとーさん、いつまでも泣いてないで、ちゃんと食べなきゃ」
 Cちゃん、今はそっとしておいてあげなよ、と言おうと思ったが、ワタシも言葉が涙に流されてしまっていた。

 CちゃんとUちゃんと三人で、ジャンバラヤに合わせて踊った。収穫祭だっ。ダンスだっ。・・・毎日が収穫祭だったらいいな。が、明日は興聖寺で演奏だな。おっ、Kさんちの手作りワインも出てきた。うめーっ。この調子だと二日酔いで演奏だな。力が抜けていいかもな。いいかもなべだな。収穫祭のつづきだな。

 おしまい。 
10.10.24 記 

 ー ー ー 24日の興聖寺での演奏は、無事終わりました。ご来場いただいた皆様、ありがとうございました。

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管理人について

HN:
巴だ リョウヘイ
性別:
非公開
職業:
揚琴・笛演奏屋 オカリナのセンセイ
趣味:
ほしい。
自己紹介:
 
演奏活動範囲/全国の都心から山間地まで。
演奏場所/ホールからお座敷まで。オカリナは野外歓迎。
演奏目的/オープニングセレモニーから追悼演奏まで。
演奏形態/独奏から異業種間共演まで。
所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)

コンタクト方法/上記のホームページ(HP)の「FAQ & Form」のページからどうぞ。

特 技/晴れ男であること。

オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。

2018年、京都府下農村から大阪府下住宅街に移住。
今も雨乞い師見習い。
今も自然農見習い。
ノアのおとうちゃん。
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