#609 合 掌

#609　合　掌

　きのう、きょうと、はかどらんかったな。きのうは午前中だけ、きょうも３時までだったからな。しかも、きのうもきょうも、用地の周囲に排水＆貯水溝を掘ることから始めたから時間がかかったんだ。泥の中に何度もクワを打ち込みながらふと思ったっけ。こんなこと、今どき刑務所でもさせんぞ、させてるとしたら、永平寺くらいのものとちがうか、と。合掌。

　掘り出した土は、そのまま横へ積み上げて畦（あぜ）兼堰（せき）にするわけだが、水をたっぷり含んだ泥は、重くてかなわんな。でもって、ここは粘土質だから粘りに粘って、クワにひっついてなおかなわん。掘ってすくって積み上げて、次の動作に移ろうとしたら、積み上げたはずの泥がぜ〜んぶクワにひっついてきよる。振っても振っても落ちん、落ちん、落ちん。これはいったい、なんのトレーニングなんだ。
　きのうときょうで、たったの１０ｍと少し掘っただけだったな。これで用地の周囲を一周だ。三日間で用地がふたつで２０ｍか。５０ｍは掘ったような気がするな。とにかくこれで、きょうも種籾が蒔けたな。合掌。

　田んぼと言っても、泥の底には石があるわな。ときどき、人の頭ほどのごっつい石が居座っとるわな。ときどき、人の胴体くらいの石も寝そべっとるわな。歯が立たんじゃなくて、クワが立たん。クワが曲がるわな。打ち直しても打ち直しても、曲がってしまうわな。
　それを見たとなりの田んぼのＭさんが言いよった。
「そんなホームセンターで売ってるようなクワはすぐに曲がってしもて、あきまへんで」
　昔農協で買って十数年来使ってるクワだと言ったら、黙ってしまわれた。合掌。

　んでも、腕も腰も痛くもなんともないな。我ながら不思議じゃ。身体を鍛えるようなことなんか普段から何ひとつしてないのにな。腕力も基礎体力もないし。コツというほどのコツがいる作業でもないし。いったい、なんで平気なんだろな。穴掘りの才能があんのかな。道を間違ったかな。それとも、守護霊様が後ろからそっとクワを支えたり押したり引いたりしてくれてんのかな。合掌。

　ようやっときのうのつづきの籾を蒔けると思ったら、雲行きが怪しくなってきやがった。米ぬか撒いて籾をひと粒ずつ土の上に置き始めたら、ぽつりぽつりと来やがった。だからもっと早起きするって言ったんだよ。すればいいじゃないか。できなかったんだよっ。いい夢見てたんだよっ。それはそれで、合掌。

　畦作りはおもしろいな。粗い土の上にだんだん細かい土を塗り上げていけば丈夫な畦ができるってことはわかってるけれど、なかなかそうはいかんな。粗い土と細かい土がないまぜになってしまうな。てえと、どうしても外から水が漏ってくるな。が、積み上げた土を踏み固めたりクワで押し固めたりして、その上に水をかけて泥を塗って平らにして、それまでちょろちょろと漏っていた水がぴたりと止まったときは、たとえようのない快感でそれはよかったな。あああああっ、合掌。

　あしたも溝掘り籾播き畦作りができるなんて、合掌三昧。

　おしまい。　
10.04.30 記　

山吹色

2010/05/01 (Sat) 田舎暮らし TRACKBACK() COMMENT(0)