#606 翡 翠

#606　翡　翠

　ＧＷって書くとゴールデンウィークってことなのかな。二人のおじいさんっていう意味だと主張すると干されるかな。陽気の下で、大型連休を先取りしたようなのんびりムードで座り込んでダベる二人のおじいさんを見てたら、そんなフレーズが浮かんでしまったのであった。で、ＧＷ。農村ではグリーンウィークとなる。草刈りだ、田植えだ、なんだかんだ。

　マイ田んぼは、田植えどころかまだ種籾すら播いていない。昨年は４月１１日に播いたから、すでに半月遅れだ。この寒さつづきだったから少し遅く播くことにしたとは言え、仕事が忙しくなってさらに遅れて、少々あせってきた。明日は頑張るしかない。

　きょうも種籾播きの下準備にマイ田んぼへ向かった。マイ田んぼまであと５０ｍのところにある小さな堰堤。そこはカワセミの餌場だ。きょうはいないかなー、と遠くから足音を忍ばせて接近。いない。

　が、どうだ。マイ田んぼに接して流れる用水路。そこからコバルトブルーの奇跡が飛び立った。

　魚だったら川の方がたくさんいるだろうに。・・・そうか、前回出会った４月１１日。あれ以来ワタシを慕って、ワタシが田んぼに来るのをずっと待っていてくれたんだな。だったら逃げなくてもいいのに。待っていたのがバレたって恥ずかしがることはないじゃないか。

　・・・きのう新ものタケノコをいただいたが、モウソウダケを食べると、想像力はこうした方向へ働くようだ。

　さて、女の人はたいてい、宝石が好きだ。確かに宝石は美しい。そして場所を取らないし、所有していればいつでも愛でることができる。盗難は気になるが、保存にも困らない。が、生きている宝石もまた美しい。
　カワセミは翡翠とも書く。そのまま「ひすい」と呼ぶこともある。「渓流の宝石」とも呼ばれる。そのあまりに美しいコバルトブルーは、日本の自然が生んだ奇跡だ。この生きた宝石は、生きているがゆえに生きるための広い空間を必要とし、何人も所有することはできないがゆえに望むときに愛でるわけにはいかない。そしてそれゆえに、美しさはいっそう増す。

　カワセミは、下のくちばしが赤いのがメスだそうだ。きょうは、思いがけずほんの１０ｍほどの距離まで近づいた。が、あいにく後ろ姿だった。正面からあの子のくちばしの色を確認できる距離まで近づける日はやってくるのだらふか。

　おしまい。　
10.04.24 記　

2010/04/25 (Sun) 田舎暮らし TRACKBACK() COMMENT(0)