#234 夜のしだれはシャバドゥビア

#234　夜のしだれはシャバドゥビア

　日本中の桜が次々に Flowering している。この日の夜桜コンサート、ご主催者の松林院さんはそもそも例年当寺のしだれ桜が見頃の４月１２日が第一希望だったが、私のスケジュールの都合で５日に決定したのが昨秋。ところが、桜の開花が全国的に早まった今春、かえって最高の見頃の日に開催となった。さすがお寺だ、仏様のお導きだ。檀家さん一同、しだれ桜とお上人の法話とワタシの揚琴の音色、そしてお花見弁当をたんのうされた。

　松林院は、京都盆地のまんまんなか（京都弁で「ちょうど中央」の意）にある。国道１号線と９号線が交差する交通の要所であり、車の通行が途絶えることがない地域であるにも関わらず、そこから細い辻道に入ったところにあるこのお寺の本堂とお庭は、悠久の静寂に満たされているかのような落ち着いた、そして澄んだ空気を保ち続けている。そこにひっそりとたたずむ一本のしだれ桜は、この娑婆世界にも極楽の気が舞い降りてくるひとときがあることを示すために息づいているかのようだった。

　この日のテーマは「祈り」で、第一部は松林院の大西秀樹上人の法話。第二部がワタシの揚琴演奏だった。
　お上人の法話のテーマは、「娑婆（しゃば：人間が生を受けたこの世界のこと）は人の魂を成長させるためにある」というものだった。苦しみこそが人を成長させる、欲望のままに安逸をむさぼっていてはけっして成長は望めない、というお話を、持ち前のユーモアたっぷりに説かれた。会場はいったい何度爆笑に包まれたことか。
「あるご婦人が、１４万円でルイ・ヴィトンのバッグを買って街へ出たら、３秒後に前方からもっと高いグッチのバッグを持ったご婦人が歩いてきた。それを見て、あー、グッチを買えばよかった！・・・と後悔したこの方の幸せは、たった３秒しかつづかなかったわけですな。物欲にしたがって生きるとはこういうことです」
　しかり、しかり。

　苦しみ多き娑婆ではあるが、音楽というものはしだれ桜と同じく、人の心をしばし安らげるものにちがいない。ジャズの世界では、音楽によって娑婆世界につかの間の喜びが作り出されたときのことを、「シャバドゥビア」と表現する。

　この日の美しい写真は、写真家の永野一晃さんのサイトにも紹介されている。
　なお、この日の模様も、４月３日に紹介させていただいた「大阪ほんわかテレビ」の番組中に挿入される。もしかすると、あっと言う間だが。

　おしまい。　
08.04.06　

夕暮れ時の松林院のしだれ桜

お上人と揚琴奏者

2008/04/06 (Sun) 揚　琴 TRACKBACK() COMMENT(0)