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揚琴、オカリナ & インディアンフルート奏者がつづるいろいろばなし。
音楽、田舎暮らし、自然・環境、時事、ほかいろいろ。
どうぞ、ごゆっくり。
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#123 幻の音色

「揚琴をするにあたっていちばん苦労することはなんですか」とたずねられれば、言下に「弦の張り替えです」と答える。ちなみに、二番目が「調律」、三、四がなくて、五が移動。
 演奏はその六以下かって? そりゃそうだ。誰でも「たたけば鳴る」わい。

 このたび、弦の張り替えをした。弦を張り替える日は、相当気合いと覚悟がいる。あらかじめスケジュールを調整して決行の日を決めていても、その日になれば「きょうは疲れている」「天気が悪い」「暑い」「寒い」「寝過ごした」「仏滅だ」などと言って、なかなか始められないときもある。

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 で、今宵は新月の夜に、張り替えは終わった。

 揚琴の弦の張り方は、ギターのそれとはずいぶんちがう。一本張るにもずっと骨が折れる。
 道具がたくさん要る。調律用ハンマー、弦を切るニッパ、弦を曲げたり引っ張ったりするペンチ、弦を押さえる千枚通し、弦が入った袋を切るハサミ、新品の弦に付いた錆び止めの油をふき取る布、弦が指にささったときに使うバンドエイド、たばこ、お茶、おやつ、イカの頭。これらを駆使して、121本の弦を張る。
 古い弦をすべてはずしてまとめるだけでも、一時間以上かかってしまう。ここでいやになってやめるわけにはいかない。弦が張られていない揚琴なんて、テーブルにもならない。
 そして、弦が張ってあるときにはできない細部の掃除をして、ようやく張り始める。

 音が低い方、つまり太い弦から張っていって、全部で30個の駒のうち25個分を張った頃が胸突き八丁だ。ここから先に弦はまだ32本あり、しかも作業はいっそうむずかしくなる。腰が痛くなり、目がかすみ、運命を呪いたくなるときだ。

 で、めでたくすべて張れて、ようやく弾けるかと思えば、これがなかなか調律が合わない。弦の張りが落ち着くまでしばらくは無駄な抵抗なのだ。
 ハンマーを右へ左へ小一時間動かしつづけ、いよいよ調律完成。まだすぐに狂ってしまうが、思い付くままに弾いてみる。

 この瞬間の快感は、言葉に尽くせない。が、張り替え直後の独特の美しい音色は、たった数日で失われてしまう。調律が落ち着かないうちのこの音色は、誰にも聴いてもらうことができない。漁師だけが船の上で食べることができる捕れたての魚の味のようなものだ。

 おしまい。 
百日紅
百日紅
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管理人について

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巴だ リョウヘイ
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非公開
職業:
揚琴・笛演奏屋 オカリナのセンセイ
趣味:
ほしい。
自己紹介:
 
演奏活動範囲/全国の都心から山間地まで。
演奏場所/ホールからお座敷まで。オカリナは野外歓迎。
演奏目的/オープニングセレモニーから追悼演奏まで。
演奏形態/独奏から異業種間共演まで。
所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)

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特 技/晴れ男であること。

オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。

2018年、京都府下農村から大阪府下住宅街に移住。
今も雨乞い師見習い。
今も自然農見習い。
ノアのおとうちゃん。
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