#127 あがったりさがったり

#127　あがったりさがったり

　毎年8月の終わりに、神戸文化ホールにて「オカリナフェスティバル」なるものが開催される。全国のアマチュアオカリナ愛好家の祭典だ。コンクールではないので、だれでも6分間は大きなステージと華麗な照明を堪能できるというイベントだ。

　今年で第6回になるが、ワタシの生徒さんたちも毎年参加している。今年は応募者多数につき抽選となり、巴だ悶下（？）もいくつかのグループは涙を飲み、よっつのグループが参加する。

　大舞台では誰しも緊張感が高まり、あがってしまう人も出る。
「どげんしたらあがらなくなるとですか？」
　と、センセイは何度もたずねられる。

　オカリナの指導の場でワタシがするアドバイスでもっとも多いのは「無駄な力を抜きなはれ」だ。二番目が「よく聴きなはれ」、三、四がなくて、五が「（各小節の）2拍目をしっかり感じなはれ」となる。

　この「無駄な力を抜く」ことが、意外にむずかしいのだ。
　風呂につかってゆったりと全身を伸ばし、力を抜いてゆく。まず四肢の力が抜けてゆき、次第に身体全体から力が抜ける。が、骨の芯から力が抜けるまでには、かなりの時間がかかる。
　この「骨の芯から力が抜けた」状態で演奏できれば理想的だ。

　力を込めれば込めるほど、エネルギーは浪費される。指は固まり、息は短くなる。できる限りゆるく構えて、瞬時に「気」を込めてこそ、エネルギーは100％有効利用できる。

　さて、あがっているとき、身体はがちがちに固まり、息は上がり、身体の重心も上がってしまっている。つまり「あがる」とは、心身の重心があがってしまっている状態のことではないかと思う。

　この状態を回避するには、無駄な力を抜くことが第一だ。風呂に入っているときを思い起こして、何度も深く呼吸し、呼吸を整え、ゆったりと構える。
　問題は、最初の音を出す瞬間だ。この直前に力んでしまっていてはなんにもならない。

　またまた山下洋輔さんにご登場いただく。氏が本番での演奏への恐怖に対して曰く。

「それは、始まればやがて必ず終わる」

　だから、こわがらなくてもいいってことで。

　あがらなくなるには、まず「欲」を捨てることかもですな。巴だ悶下はみんな出家だ。「夢無きガチョウ」だ。

　おしまい。　

松葉牡丹

2007/08/21 (Tue) オカリナ TRACKBACK() COMMENT(1)