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揚琴、オカリナ & インディアンフルート奏者がつづるいろいろばなし。
音楽、田舎暮らし、自然・環境、時事、ほかいろいろ。
どうぞ、ごゆっくり。
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去年の秋頃だったか、被災地の女性が話していた。
「あそこにはわたしたちの暮らしの思い出と心が詰まっているんです。がれきと呼ばないでほしい」(大意)
この言葉の重みを噛みしめると共に、うずたかく積み上げられた暮らしの亡骸に秘められた、あまりに沈痛な事柄に思いを馳せ、心を痛めたっけ。

それがいつの間にか、ごく事務的に「がれき」という言葉を使っている俺。
そして被災地の人々もまた「がれき」と呼ぶ。
こんな風にして人の心は麻痺していき、様々な事柄が風化していくのだろうか。
いや、ワタシ個人の資質の問題だな。
いつの間にか大切なことを傍らへ押しやってしまっていたことを、深く省みた。

拍手[4回]


人の心を失わないうちに、これからは自分だけでも「がれき」と呼ばず「被災物」と呼ばせてもらおうと思う。
今さらかえって余計なことかもしれないが、この避けて通れない問題に向き合う際に、自分にできることのひとつとして。

被災物を持ち出され、知らない土地で焼かれ埋められてしまう辛さは、いかばかりだろう。
そうするしかないと決断を迫られた人々の辛さは、推し量りがたい。
その一方で、見るたびに悲しくなるから早く片付けてほしいという気持ちもあるだろう。
どちらも理解せねば。
自分の家族、亡くなった両親を当てはめて想像してみるまでもない。
政府と被災物受け入れを表明した自治体は、このことにどこまで思いが及んでいるのだろう。

さて、先日、わが町が宮城・岩手両県の被災物の焼却灰の受け入れを表明した。
わが町に降り掛かったこの問題に対処するために、以上の視点に立ち、その上でまずは今便では、被災物の広域処理について思うことを個人的にまとめてみた。

被災物の広域処理には、次のような問題を感じる。

1.本当に被災物を運び出す必要があるのかどうかが明確にされていない。

被災者の合意が得られたという話は聞いたことがない。
実際、被災物の仮置き場はほとんどが非居住区域にあるので「復興の妨げにはなっていない」と聞く。
また地元で処理したいと望む自治体の声もあった。
地元でする方が簡単だという処理業者の声も聞く。
それを、なぜ一律に広域処理の対象にするのか。
しかも、広域処理の対象は全体の2割、400万t、分別後の可燃物だけだという。
それらが復興の妨げになっているという根拠が示されていない。

2.被災物を現地で活かそうとする試みがほとんどないようだ。

被災物は、被災者が納得いく形で有効に活かすことがベストだと思う。
が、政府と関係県がそのような可能性を真剣に探った跡がほとんど見られない。
例えば南相馬市長の「被災物を基礎にして防潮林を作る。命が宿っていた物だから、命を生かすという考え方が必要」は、被災者の思いを反映した見解であると思う。
ところが、防潮堤を作るために他所の被災物を回してほしいとの南相馬市(福島県)の要望に対して、国は「被災地間で被災物を移動させることは想定していない」と答えた。
なぜだ。

3.運び出すにしても、全国に運び入れることの正当性が見えない。

福島県の被災物だけは県内で処理するという。
それは放射能汚染が激しいため持ち出せないという実情によることはわかる。
では、なぜ持ち込んではならないのだ。
福島第一原発付近に集めることができれば、全国に放射能を拡散させる必要はなくなる。

4.放射性廃棄物の処理基準値を一方的に 8,000Bq/kg まで引き上げて運び出そうとする政府のやり方は、被災者と運び入れ先の住民双方に対して不誠実である。

被災物が強い放射能を含む場合は、受け入れ自治体では万全の放射能対策が必要だ。
それを、あいまいな測定のまま放射性廃棄物の処理基準値だけを一気に8倍に引き上げる。
これは、被災物を放射性廃棄物として認めたことをごまかす点が被災地に対して不誠実であり、安全性をごまかしている点で全国民を欺こうとする措置だ。

5.受け入れを迫られている側に、放射能対策を採る動きがまったく見られない。

全国に現存する焼却炉と最終処分場(焼却灰の埋め立てをする場所)は、放射能に対応する能力がない。
現状の施設のままで受け入れようとする自治体の真意はどこにあるのだろう。
住民を守るために放射能対策を採ることが先決のはずだが。
政府発表のドロナワ安全基準を盾に、保安のための投資を逃れようとしているのだろうか。
こんな様子だから、受け入れ表明をしてしまった自治体の住民は、国よりもむしろ自治体を抗議の主対象にした方がいい。
むろん、すでに被災物を受け入れないと表明した自治体は、放射能対策は採れないと判断したわけだ。

以上の問題点が除かれなければ、ワタシは被災物の広域処理要請を受け入れられない。
「三年で復興」という根拠と完成図のあいまいな目標のために「瓦礫」をとにかく早くなんとかしたい一心なのは、被災者よりもむしろ政府の方ではないのか。
このスケジュール優先とでも言うべきあり方に、政府が言う「復興」のいかがわしさが見て取れるように思う。
そこには、原発事故について「国民総責任」の自覚を強要し、全国に放射能をばらまいて被曝を常態化させ慣れさせ、原発をこれまで通り動かし続けることが含まれているのではないのか。
それは復興ではなく、さらに破局へと邁進する悪魔の選択ではないか。

被災物が含む放射能、すなわち被曝の無条件受け入れは、原発事故を受け入れることでもある。
それは当然、原発そのものを受け入れることにもなり、けっして容認できない。
そして原発を受け入れてしまうことは、被災者の気持ちとも真っ向から対立するはずだ。
したがって、全国の、被災物をなんとかして復興を支援したいという思いと、これ以上放射能汚染を広げてはならないという思いは両立するはずだ。
被災物を現地で活かせるのであればなおさらだ。

いずれにしても、被災物を現地で活かす努力と放射能対策が不十分なままで広域処理を迫られても、応えるわけにはいかない。
本当に被災地だけではどうにもならないのであれば、政府はなぜ被災者の真の心情をきちんと代弁し、被災地の実情を説明し、各地の焼却炉と処分場の放射能対策を後押ししないのか。
聞こえてくるのは「同じ日本人として助け合わなければならない」「三年で復興」ばかりだ。

そもそも東電の責任問題はどうなっているのだ。
なぜ東電の責任を追及する前に、事故原因が明らかになる前に、一国の首相の口から「国民総責任論」なんぞが飛び出してくるのだ。
被災物の拡散にいったいいくらかかるんだ。
400万tの被災物を10tトラックで運ぶとすれば、放射能を積んだ40万台のトラックが全国を走り回る計算だが(どなたかがそう指摘してくれていた)、そんなことが許されていいのか。(可燃物ばかりだとかさ高いからきっと40万台以上)

政府と自治体のこのような不徹底で不誠実なあり方によって、被災物問題は放射能問題にすり替わってしまった(政府の意図とは逆に!)。
自分たちの命が宿ったものを持ち出され、知らない土地で焼かれ、埋められてしまうことを断腸の思いで了承した人々は、どんな気持ちでこの経緯を見ているだろう。
こんな国に希望を見いだせるだろうか。
政府と受け入れようとする自治体が、被災者の命が宿った被災物を、金を手にしなければ引き取れない物におとしめているようなことだけはないと思いたい。

肥田瞬太郎老師はおっしゃった。
「われわれは原爆から何一つ学んでいない」

被災物が、被災した人々の心に沿うよう取り扱われることを願う。

 おしまい。 
12.04.02 記 




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所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)

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特 技/晴れ男であること。

オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。

2018年、京都府下農村から大阪府下住宅街に移住。
今も雨乞い師見習い。
今も自然農見習い。
ノアのおとうちゃん。
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