#330 買ってしまった

#330　買ってしまった

　新しいオカリナを買ってしまった。前からほしかったが、稀少品である上に人気商品ゆえいつも SOLD OUT のオカリナだった。だから、このところすっかり忘れてしまっていた。が、ある日はたと思い出して、きのうこのオカリナを取り扱っている大阪のとある楽器店に電話してみたら「へいっ、ありまっせ」と、浪速の商人らしい元気のいい答、だったかどうか。とにかく、その場で注文した。

　ところで、「買ってしまった」などという言い方をしているワタシ。というのも、#298 などで、オカリナを買うときは必ずじっくり試奏をするべし、と書いていたからだ。
「あんなにえらそうに書いていたセンセイが、電話一本で注文してしまうなんて、矛盾じゃないですか？」
　いいえ、矛盾などというものではありません。これは「破綻」です。
　みなさん、ゆるしてください。大阪の街まで歩いて二日もかかる僻地で暮らしておりますゆえ、しょうがなかったのでございまする。

　ていねいな梱包であっという間に届いたＳオカリナのピッコロ（ソプラノ）Ｃ管・『優』シリーズ。生徒さんも何人かが同じものを使っている。以前、そのうちの一人Ｔ君が使っているものをちょっと吹かせてもらった。ワタシは一発で気に入ってしまった。
「これは、最高傑作だっ」
　おおげさなヤツだと我ながら思うが、ほんとうにかなり感動した。が、当時はＮ社のものを気に入って使っていたので、購入には踏み切らなかった。

　その後、他の生徒さんも同じものを買った。いいなあ。
「ちょうだい」
「いやです」
　お世話になっているセンセイのご要望になぜ気持ちよく応えてくれないのだろう。
　この生徒さんはウチの近くに住んでいるのに、わざわざ心斎橋の楽器店まで出向いてゲットした。熱心さと行動力に脱帽。ワタシはと言えば怠慢にも、きつねうどんの出前よろしく電話で済ませた。

　それにしても、小さいなー。これまでで最小最軽量のオカリナだ。そして、商品説明に「コーヒー黒陶仕上げ」とあった通り、梱包を解くとコーヒーの香りが部屋いっぱいに広がった。・・・ウソです。
　内側まで真っ黒だが、「コーヒー黒陶仕上げ」とは塗料をまったく使っていない仕上げだそうだ。それでいて素焼きそのままの質感ではなくて、すべすべで、固く焼き締った感じだ。そのため、吹いていてとても気持ちが良く、安心感がある。

　音色は、少しシャープな姿とは裏腹に軽くてやさしいが張りとつやもあり、軽く吹いてもよく通る。Ｎ社のもののようなパワー感はないが、ＳＣ管に多い高音域のキツさがない。注意深く吹けば、アンサンブルにも比較的よく溶け込むと見た。
　ピッチも上から下まで安定しており、くせが少ない。

　早く仲良くなりたいが、小穴の押さえ方がなかなかつかめない。
　オカリナ通のＴ君によれば、
「Ｓオカリナのニューモデルは、指穴の周囲の削り方は、中指の周囲だけをなめらかに削るスタイルに変わっている」
　とのことだったが、その通りだ。その削りのアールの優美で芸術的なこと。見とれてしまう。作者さんは元ペット吹きだそうだが、このアールといい全体のフォルムといい、陶芸家の技のようだ。

　こうして、新しいオカリナをどんどん好きになっていくのであったとさ。

　おしまい。　
08.10.18 記　

ＳオカリナのピッコロＣ管・コーヒー黒陶仕上げ

2008/10/19 (Sun) オカリナ TRACKBACK() COMMENT(1)