#99 かぽかぽの産地直売

　新月の夜の9時4分に願い事をよっつすると叶うんだって。しらなかった。

　今宵は新月。竹や木を切るのは新月の日がいい。新月の日は竹や木の成長がいちばん少なくなる日なので、切ったあとでそりやゆがみがいちばん小さくなるという。
　そして、新月の日はスタートの日。きょうは新しいことが始まる予感が生まれた。

　京都府中西部の農山村であるＫ町に２年前にできた安全安心のケーキとパンとランチの店の菓歩菓歩（かぽかぽ）は、「和知山野草の森」のとなりにある。そこで開かれた手作り料理や手作りパンの市とコンサートのイベントへ出かけてきた。菓歩菓歩のオープン２周年記念なのだ。

　行ってみれば、菓歩菓歩のオーナーを始めきょうの出演者一派はずいぶんひさしぶりに会う級友、ちがった、旧友ばかり。いきおい同窓会の趣きとなった。そこに近頃知り合った出演者たちとスタッフの面々も加わって、見渡せば、ワタシにとって新天地に移ってからの、古くて新しいつながりがここでも生まれつつあることに改めて驚かされた。このつながり、旧知の安心感と未知の可能性がミキシングされているところが大いにミソなのだ、と、天の配剤をかみしめることとなった。

　ところで、いわゆる田舎でのコンサートは、環境は抜群であっても、なにせ地元に人は少ない、街は遠い、ゆえに人が集まらん、企画の機会も減る、ますます人が集まらん、という過疎地の諸事情そのままの残念な状況がある。しかし、菓歩菓歩にはずいぶん遠くから訪れるお客さんが多い。きょうも台風接近の雨の中でも大入り満員であった。
　街のみなさん、どうぞあたり一面の緑とおいしい空気の中でのコンサートへ、どんどん足を運んでくださいな。街の立派なホール、おしゃれなライブハウスももちろんいいけれど、自然の中で聴く音楽は聴こえ方がちがいます。
　われわれのような生楽器の演奏による音楽の多くの源泉は豊かな自然の風土だ。だから、自然豊かなところでのコンサートは、いわば音楽の産地直売なのだ。いわんや現地のミュージシャンによる演奏は、おいしいに決まっているのだ。

　きょうの出演者のひとりでありコンサートを中心になって切り盛りしていた小坂武氏は、ギター奏者であり楽器製作者でもあるという得難い人だ。彼と菓歩菓歩のオーナーＩさんの今の地元である旧Ｗ町とワタシが近年引越してきた旧Ｍ町がその後合併してこのＫ町になった。われわれのあずかり知らぬところで旧知のわれわれの居住地がひとつの枠にくくられてしまったというわけだ。こんなこともある。

　それはともかく、旧知のみんなが地元でこのような素敵なお店を構えられたこと、こんなに楽しいイベントを開催してくれたことはまことにうれしく、わくわくしてしまった。次なる展開やいかに。

　この日の出演者。

・小坂武（ギター、ブズーキ）＆ 赤澤敦（ウクレレ、フィドル）with 小坂奥方Ｉさん（アコーディオン）

・やのん絵本ライブ

・ロビン・ロイド（カリンバ、スティールドラム、尺八、三線）＆ 山田晴三（カリンバ、ヴォーカル、ベース）with 飯塚あかね（ヴォーカル、カズー）

　

　でした。

　え、ワタシ？・・・お客さんでした。踊ってました。それを早く言えってか。

ワタシノナマエハ「ウツクシイツキ」ッテカクノ

　おしまい。