#868 過 剰

今のマイ田んぼでいちばん大きな株は、たぶんこれ。

３、４本の野生化稲が一体化してこのような立派な姿になった。
その辺の田んぼではあまり見かけない威容だ。

梅雨が明け猛暑続きのこの数日、各地の田んぼが中干し（土用干し）に入った。
中干しについて調べていたら「過剰分げつ」という言葉に出会った。
（稲は1本の茎が根元から分かれて増えていきますが、これを分げつと言います。稲穂は茎一本にひとつ実ります）
慣行農法の田んぼの平均的稲は、１株当り２０本程度にまで分げつしたら、分げつが止まる。
元は４、５本の苗を一束にして植えているから、一本の苗当り４、５倍に増えた計算だ。
で、分けつが一株当たり２０本を越すと、過剰分げつと言われる。
過剰分げつした稲は実が小さく実り少なくなるとのことだ。
で、中干しの目的のひとつは、田んぼの水を切って過剰分げつを防ぐことなのだそうだ。

さて、冒頭の写真のウチの稲。
どう見ても過剰分げつですな。
が、自然農においては過剰分げつという言葉はどうなのだろう。
稲が育ちたいように育っているだけじゃないか。
過剰分げつ、万歳！

一本立ちの稲でも、ここまで分げつする。



これも一本立ちで「過剰分げつ」間近だ。



いくらでもある。



そして、いまだにこんな稲もいっぱいあるマイ田んぼｗｗ



５、６粒ずつ直播きした株は、野生化稲の一本立ちよりもやさしい姿だ。

さて、４、５本の苗を一束にして植える一般的な田植えを経た苗は、一本が４、５本の茎に分げつする。
一方、一本立ちにした苗は、ときには２０本にもなる。
だから、一本立ちの方が得に見える。
が、一本立ちは小さい頃には様々な障碍に弱く、十分に育たないリスクが高い。
結果として田んぼ全体の収量を見れば、４、５本植えの一般的な田植え方式の方が収量が安定すると考えられている。
このあたりのことを実験を通してよく調べたのが、この熊本市立松尾西小学校 6年1組の報告。
「1粒のお米から何粒のお米ができるのか」
一本立ち（一本植え）の稲の平均分げつ数は１３．６本だったそうだ。

どんな方法で苗を作り、どのくらいの大きさの苗をどれくらいの条間・株間で植えたのかという基礎データが抜けているが、たいへん参考になった。

過剰分げつをものともせず、逆に増収に結びつけているのがＳＲＩ農法と呼ばれる農法だ。
条間・株間をたっぷり取って一本植えにして育てた壮大な稲は、自然農実践家の川口由一さんの稲とそっくりだ。


どのような視点で稲を見るかで、壮大な成長も過剰と呼ばれることになってしまう。
人間の視点が欲目に堕してしまったとき、稲のポテンシャルは阻害される。
人間のなすがままにされて一律に育つお行儀の良い植物に見える稲だが、いったん野性を全開にすれば、想像もできないほど力強い存在として人間の前に立つ。
そこに美があり、神秘がある。

　おしまい。　
13.07.12 記　

これはいただきもののJAの苗を３本植えしたエリア。