#676 秋 風

#676　秋　風

「身体のためにもっと歩くべし」という話題中、ケイタイを見て「きょうはもう3,000歩歩いた」と言うご婦人Ａ。と、ケイタイを取り出して「ワタシはまだ2,000歩だわ」とのたまうご婦人B。「わたしはどうかな」とケイタイに手を伸ばすご婦人C。驚くワタシと男性Ｄ。みなさんよく歩くなーと驚いたのではない。ケイタイに万歩メーターが付いているのを見てオドロイタんだってば。

　いや、キョウビは万歩メーターなどとは呼ばず、ウォーキングカウンターとかカロリーカウンターなどと言うんだって。時代に遅れていてもせいぜい歩数計と言うくらいで、万歩メーターなんて呼ぶのは浦島太郎とワタシくらいだそうだ。その機能は歩数の計測だけではない。きびきび歩いたか、たらたら歩いたかの区別もできてしまう。また、歩くことによって消費したカロリーも表示する。

　調べてみたら、もう７年も前に一号機が発売されてたんだって。腰に付けた機械が歩行の振動を検知して歩数を記録するというのが、従来の歩数計の原理だった。が、ケイタイ歩数計は、手に持ったバッグの中でもちゃ〜んと歩数を計測する。オドロキだ。知ってたってか。悪かったなっ。

　実は、始めから話がそれてしまっている。つーか、ここまでが枕か。

　冒頭で書いたケイタイ歩数計を比べあった妙齢のご婦人たちの中に、なぜワタシがいたのか。
　先日、地元ケーブルＴＶによるマイ田んぼの取材第三回があった。第二回で、近所の数人のご婦人方が、マイ田んぼで田植えもしくは田植え体験をされた。そのときに植えた稲を、植えたみなさんが刈り取る模様の収録が第三回取材だった。で、ケイタイ歩数計的ご婦人方は、その稲刈りをしたご婦人方だったのだ。

　稲刈りが終わって、みんなで田んぼの傍らの草の上にすわり、野良着のままでお茶を飲んでいたら、ケイタイ歩数計と体脂肪の話になっちゃった。このときがいちばん盛り上がっていた田舎的ご婦人方。
　ついさっきまでみんなで触れていた土の感触、泥の香り、分かち合っていたはずの収穫の喜びは、一体全体どこへ行ってしまったんだらふ。生徒的ご婦人方が一所懸命にレッスンに取り組んでおられると思ったら、休憩時間になった途端に世間話の応酬でレッスン中よりも盛り上がるという、あのときとそっくりのうらぶれた風が、ワタシの心の中を吹き抜けて行ったとか行かなかったとか。

　おしまい。　
10.10.06 記　

みなさんが植えたこの一角だけを刈り取った。

2010/10/07 (Thu) 田舎暮らし TRACKBACK() COMMENT(0)