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揚琴、オカリナ & インディアンフルート奏者がつづるいろいろばなし。
音楽、田舎暮らし、自然・環境、時事、ほかいろいろ。
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#671 尊 敬

 寒山拾得という話がある。俗物の高級官吏が乞食坊主にからかわれる中国の話だ。痛快を覚える反面、自分も乞食坊主にからかわれるクチではないかと、身につまされたりもする。寒山拾得は古今東西、絵画の題材としても多く用いられている。描く人は、やはり痛快と被害意識の狭間で揺れ動きながら、何ものにも束縛されない寒山と拾得に憧れを抱きつつ描いたのやもしれない。

 10月末、その寒山拾得図が納められているお寺でオカリナを演奏させていただく。「達磨忌」の法要の日だ。が、対象となるお客さんは檀家さんだけだそうなので、ここで詳細はお知らせしない。うっかりお寺の名前を載せれば、それを目にしたワタシの熱狂的なファンが大勢詰めかけ、ファンとお寺さんが入れろ、入れないと押し問答になっては申し訳ないからだ。

 そんなわけでかどんなわけでか、ひさしぶりに森鴎外の「寒山拾得」を読み返してみた。そのおもしろいこと、深いこと。時代と国を越えた風刺だ。
 鴎外によれば、これは自分の子どもが寒山と拾得についてあれこれたずねるもので、答えるために語り聞かせた話を、後でほぼそのまま文章にした作品だという。流石文豪。

 このあたりのいきさつは、森鴎外の「寒山拾得縁起」に詳しい。これがまたあんまりおもしろいので、ちょっと紹介。
 鴎外の息子は、「なんで? なんで?」盛りの年頃のようだ。寒山とは、拾得とはどんな人間なのだと、鴎外にしつこく問う。
「寒山拾得」では、官吏が寒山は文殊簿菩薩の化身、拾得は普賢菩薩の化身だと担がれる。担いだのは、官吏の頭痛をまじないで治した乞食坊主の豊干だ。寒山も拾得も、実は寺で下働きをして坊さんの残り物を食べる、言わば最下層の人間だった。それがなぜ文殊と普賢なのか、鴎外の息子はわからないと言って鴎外を困らせる。鴎外は、当時の新興宗教の教祖をメッシア(救世主)だと言って拝みに行く人がいるがあれと同じだと説明する。が、得心できない息子。そこで困り果てた鴎外は言う。
「実はパパアも文殊なのだが、まだ誰も拝みに来ないのだよ」

 ワタシが鴎外の息子だったら「何故お父様が文殊なのですか?」とひつこく問うだろうけれど、鴎外の本物の息子は文豪的息子だから、これで得心して、大笑いし、寒山と拾得、そして官吏を担いだ豊干のことを大好きになったにちがいない。
 にしても、ここでの鴎外には、なかなか息子自慢・親バカな所が見えて愉快だ。おまけに「子供にした話を、ほとんどそのまま書いた。いつもと違って、一冊の参考書をも見ずに書いたのである」などと、自慢とも取れそうなことを述べている。こんな風に読者に創作の実態を知ってほしいという心理が働くのは、あの文豪でも同じなのやも知れんな。

 ん、あんまり人のことをわかった風になんだかんだ言ってると、寒山と拾得に笑われるな。
 寒山拾得のテーマは、「盲目的な尊敬は無意味」というものだ。あっという間に自分の頭痛を直したからといって乞食坊主豊干の言うことを鵜呑みにしてしまった官吏。乞食坊主以下の暮らしをしている寒山と拾得を生き仏だと信じ、衆目の前で礼拝してしまう。豊干は、自分の目で真実を見ることができないのに権威を振りかざして生きている人間をからかったのだ。寒山と拾得は、官吏が豊干に担がれたことを一瞬で理解して、大笑いして逃げ出す。
 鴎外のことをわかった風に言ってると、寒山と拾得に「お前それは盲目的尊敬の一種だぞ」と笑われるってことで。

 おしまい。 
10.09.26 記 
今年は咲くのがちょっと遅い彼岸花
彼岸花1009

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巴だ リョウヘイ
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自己紹介:
 
演奏活動歴/揚琴、27年。オカリナ、16年。
活動範囲/全国の都心から山間地まで。
演奏場所/ホールからお座敷まで。オカリナは野外歓迎。
演奏目的/オープニングセレモニーから追悼演奏まで。
演奏形態/独奏から異業種間共演まで。
所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)

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特 技/晴れ男であること。

オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。

京都府下農村在住。
雨乞い師見習い。
自然農見習い。
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