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揚琴、オカリナ & インディアンフルート奏者がつづるいろいろばなし。
音楽、田舎暮らし、自然・環境、時事、ほかいろいろ。
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「芸術とは、目に見えるものを再現することではなく、見えないものを見えるようにすることだ」と言ったパウル・クレー。クレーの絵は、絵画が時を超える魔法であることをワタシに教えてくれる。京都国立近代美術館で見たパウル・クレー展には、ワタシの魂が求めていた黄色、緑、橙色、茶色、赤、紫そのものがあった。

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 ピカソ、岡本太郎、フェルメール、モディリアニらの、子どもの頃からワタシにとって『芸術』のイメージそのものだった絵。いつかその中央に位置することとなったクレーの絵。クレーの色彩は、黄色も緑も橙色も茶色も赤も紫も、ワタシに評価させる余地を残さない。それらの色彩と対峙するとき、ワタシはただ、自分の胸を満たしてゆくえも言われぬ感情に身をゆだね、絵画だけが持つ魔法に魂を捧げ尽くすだけだ。

 気体のような黄色に包まれた部屋の描画である「ゲルストフォーヘンの回想譜」と向かい合ったとき、懐かしさと落ち着きと軽い高揚感がないまぜになったような感情が、静かに沸き起こってくる。
「獣たちが出会う」の基調となっている橙色や鬱金色や茶色は、ワタシの血を原始の安らぎへといざなう。
 くすんだ緑を基調とした「山への衝動」の前に吸い寄せられるように立ったとき、意味ありげに赤く塗られたトロッコの先端の矢印は、まさにワタシの山への衝動を鼓舞した。
 矢印と言えば、「上昇」という小品に描かれた赤い矢印は、これこそ創造の神が我々のDNAに忍び込ませた謎の顕在化だと思わせる。見る者は、その背景の深遠な空虚に時を吸い取られてしまう。

 さて、クレーが言う「見えないもの」とは何だろう。感情のことだらふか。いや、それだけではあるまい。それは、染織家の志村ふくみさんがクレーに捧げる詩の中で言う「それはどこか霊の世界で出会ったのか 聖ペテロ島の秋の風景の中なのか 白い風鈴草の咲く山間の沼だったのか 吾々の魂がかつてそこに住んでいたかのような なつかしさなのです」のような世界の様子なのやもしれない。

 クレーは、大作指向ではない。さほど大きくはない額縁に納められた小品で(それらすべてには、一行詩とでも言うべきイマジネーション豊かなタイトルが冠せられている)、人の心の奥深くに、巧みに、そっと忍び込み、雑然とした日常の虜囚となっていた密やかな感情を、あるべき世界へと解放する。その魔法は、けっして人を不幸にしない。

 ともすれば震災で疲弊しかかっていた精神がリフレッシュされた、にわか美術評論家でしたとさ。

 おしまい。 
11.03,27 記 

「獣たちが出会う」
獣たちが出会う
「山への衝動」
山への衝動

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揚琴・笛演奏屋 オカリナのセンセイ
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所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)

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特 技/晴れ男であること。

オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。

2018年、京都府下農村から大阪府下住宅街に移住。
今も雨乞い師見習い。
今も自然農見習い。
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