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揚琴、オカリナ & インディアンフルート奏者がつづるいろいろばなし。
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#743 未完成

 三十五年前に聴いていた曲の、最近の演奏を YouTube で見つけた。イギリスの自作自演のグループだが、同じ顔ぶれで演っている。変遷が激しいポップミュージック界では極めてまれなことだ。ただし、往時のエレキギターとエレキベースを生ギターと生ベースに、電子キーボードをピアノに替えての演奏の上、みんなほとんどじいさんだ。が、少しも変わることがない熱い魂。ずごい。

拍手[4回]


 このグループの変遷は、同じ曲が同じ人間によって異なる表現で演奏され得ることを示している。該当の曲には、これまでいくつものバージョンがあった。で、どのバージョンでも、構成やメロディーやハーモニーやリズムといった曲の構成要素が大胆に変えられてしまっている。電気楽器を生楽器に持ち替えてのバージョンでは、その点が顕著に見て取れる。それでも、その曲はあくまでその曲でありつづけている。

 曲は、出来立てがいちばん熱い。が、年月を経ることで味わいが深みを増していくことはある。もちろんそれは、数十年に渡って演奏者が魂を込め続けることができる素地がある曲であればこそのことだ。その素地というか曲の素性に、演奏者が魂を込めて解き放つことで、曲は真の生を受ける。つまり、作曲という作業は演奏の土台作りだと言える。

 ふと、曲の完成とは何を意味するのだらふという問いに立ち返った。楽譜に書かれた曲は、その時点をもって完成とされ、作曲者自身によって書き換えられることはまずない。クラシックの曲はすべてそのように扱われている。それはそれらほとんどの曲が、作曲者から第三者に売り渡されたものであるという事情もある。が、いずれにせよ、楽譜を手にする者は、それが完成品だと考えて取り組む。ここに誤解が生じる。

 誤解とは、「曲とは楽譜通りに演奏されねばならないものである」「作曲者が意図しない表現を付け加えてはならない」等々だ。ついには、表現記号が何一つ書き込まれていないバッハの曲の楽譜を「まったくニュアンスを付けずに演奏すべき曲である」などというベラボーな誤解が生まれる。

 さて、作曲者または第三者が曲の姿を作り変えていく場合、どの時点をもって曲の完成と呼ぶのか。前述の「作曲とは演奏の土台作りである」という立場に立てば、答はふたつある。
 ひとつは「曲が演奏されたときがその曲の完成のときである」だ。演奏を大前提としている作曲という行為は、当然、演奏されたときに完結し、その時点で曲は完成すると言えるのではないだらふか。
 そしてもうひとつの答は「曲には完成というものは無い」というものだ。少なくとも演奏者の数だけ表現があるはずだから、その意味においては曲には完成はないと言えるわけだ。
 なお、この立場に立てば、演奏というものの定義も自ずからはっきりする。それは、曲の再現ではなく、曲の創造の最終過程であるというものだ。それは、曲に魂を込めることにほかならない。

 ということで、曲の良し悪しとは、やはり時と所を超えて魂を込められるものであるかどうかだと言える。だから、永遠の未完成こそ、最高の作品の属性であることになる。

 ワタシが自分の揚琴のために作った曲の中にも、二十年以上演奏し続けている曲がある。いっちょ今度、彼らとは逆に、エレクトリック・ヤンチンでもやってみっか。

 おしまい。 
11.03,07 記 

Yes "Roundabout" 1972

Yes "Roundabout" 2008 頃

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巴だ リョウヘイ
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揚琴・笛演奏屋 オカリナのセンセイ
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演奏目的/オープニングセレモニーから追悼演奏まで。
演奏形態/独奏から異業種間共演まで。
所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)

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特 技/晴れ男であること。

オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。

2018年、京都府下農村から大阪府下住宅街に移住。
今も雨乞い師見習い。
今も自然農見習い。
ノアのおとうちゃん。
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