揚琴、オカリナ & インディアンフルート奏者がつづるいろいろばなし。
音楽、田舎暮らし、自然・環境、時事、ほかいろいろ。
どうぞ、ごゆっくり。
音楽、田舎暮らし、自然・環境、時事、ほかいろいろ。
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ある日、電力会社がやってきた。
お前の土地を原発用地として一億円で売ってくれと。
一億円あれば、今の暮らしぶりならたぶん残りの人生遊んで暮らせるな。
が、客間で座卓を挟んで電力さんと向き合って、ワタシはうなった。
「う~む…」
お前の土地を原発用地として一億円で売ってくれと。
一億円あれば、今の暮らしぶりならたぶん残りの人生遊んで暮らせるな。
が、客間で座卓を挟んで電力さんと向き合って、ワタシはうなった。
「う~む…」
電力さんの説明と説得はつづく。
「原発を作れば、自治体には多額の補助金、寄付金、固定資産税が、各ご家庭には立退料や様々な補償金が入ります。それらは必ずこの地域の暮らしを向上させます。そして原発は国全体の経済成長を後押しします。あなた様さえご了承下されば、直ちに着工できるのです」
「でも、ゲンパツはあぶないからね~」
「いえ、私共の原発は絶対安全でございます。かくかくしかじか…」
返事をしないまま、一時間が過ぎた。
「う~む、う~む…」
「…では、きょうはこの辺でおいとまいたします」
明くる日も電力さんはやってきた。
「二億円でいかがでしょうか」
返事をしないまま、一時間が過ぎた。
「う~む、うむ、うむ…」
「…では、きょうはこの辺でおいとまいたします」
明くる日、電力さんは三億円を提示した。
「うむむむむ〜…」
この日もワタシは、ただうなるばかりだった。
十日目。
この日電力さんは、副社長が数人のお伴を従えて黒塗りの高級車で乗り付けてきた。
しかも、お伴の者たちに十億円のキャッシュが入ったカバンを抱えさせて。
お伴の一人が、古道具屋で買ってきた古びた座卓の上に札束を次々に積み上げた。
副社長は、正座して微動だにせず、無言でワタシの目をじっと見続けている。
十億円の札束を乗せた古座卓は、札束の重みでみしみしときしんだ。
副社長は座布団を背後に引き、畳の上にひれ伏した。
「あなたさまのご決断にこの地域の、いえ、この国の命運がかかっております。なにとぞご了承くださいませっ」
勝負を賭けてきたな。
ワタシは軽く咳払いをすると、おもむろに口を開いた。
「この土地は、売りません」
「…な、なぜですか、十億円でも足りないとっ」
「ワタシは、ゲンパツなどいらないし、そんな大金もいらないのです。これまでも、これからも。…ゲンパツがなくても、十億円がなくても、ワタシは十分幸せです。これまでも、これからも。そして、人々にそんなものが必要だとは、どうしても思えないのです。ゲンパツなどは、歴史の墓穴の中に今すぐ葬り去っていただきたいのです」
「そ、それなら、なぜきょうまで返事を引き延ばしてきたんだよっ、この野郎っ」
「『わたしたち』の思いの強さを示し、理解していただくためです。事実、あなた方は始めから十億円出さずに、小出しにしてきたではありませんか。そしてあなた方は『わたしたち』の思いの強さを、とうとう最後までまったく理解しなかった」
「『わたしたち』って、あんたと奥方のことかよっ」
「ちがいます。ここにはおられないが、お金には換えられない価値を知るすべての人のことです」
…言ってみたい。
ううっ、一度でいいからこんな風に言ってみたいよ。
快感だろうなー。
電力さん、ぜひ来てください。
十億円を蹴る快感を味わわせてください。
ざまーみろって感じだ。
金じゃねーよ、このやろー。
ところで、下北半島の最北端、つまり本州の最北端に建設中の大間原発。
その炉心の予定地だった土地の地主さんは、今でも建設に反対して、地域ではただ一軒立ち退いていない。
結局、炉心予定地は数百メートル離れた所に設定され、工事は始められた。
が、ある日、一人で反対し続け数億円の立退料にも首を縦に振らなかったこの家の女主人さんは、不幸にも不慮の死を遂げてしまわれた。
そこで電力会社は、ご子息たちに十億円をちらつかせて遺産相続でのトラブルをねらった。
が、ご子息たちはお母様の遺志を受け継いで受取を拒否し、今も立ち退いておられない。
村八分にされ、脅迫・いやがらせを受け続け、それでも「海に生かされてきた」との先祖代々の漁師の心を守り続けておられる。
下北半島が、その厳しすぎる自然によって、ほんの五十年前までいかに苛酷な暮らしを強いられてきたか。
温暖な土地で暮らす者にはけっしてわからない。
それが、政治のお蔭で少しずつ暮らしが上向いてきた。
大間原発、そして同じく下北半島に位置する東通原発、六ヶ所村再処理工場、むつの使用済核燃料中間貯蔵施設の問題は、この文脈で考えられるべきだ。
誰しも人並みの暮らしがしたいと願うのは当然だ。
また、この国の政治が地方に手厚かった時期があったことは確かだ。
が、一度手放してしまえば二度と還らないものがふたつあると、ワタシは思う。
それは、自然と人の心だ。
手放したときには、人は自身の未来にバイバイしているのだ。
自然と人の心は、しっかりと一体になっているときには何よりも強い。
が、別々にあるときには、あまりにも繊細でか弱い。
自然と人の心を金の力で分断し、か弱さだけをあらわにしてしまった人の心、人の弱みにつけ込むのが、奴らの常套手段なのだ。
ウチの地所をたくさんの人が働ける施設か農地にするから一億で売ってくれということだったら、もう今すぐにでも売るんだけどなー。
が、これっぽっちの荒れ地ではありえなくてそれはそれはよかった。
「原発を作れば、自治体には多額の補助金、寄付金、固定資産税が、各ご家庭には立退料や様々な補償金が入ります。それらは必ずこの地域の暮らしを向上させます。そして原発は国全体の経済成長を後押しします。あなた様さえご了承下されば、直ちに着工できるのです」
「でも、ゲンパツはあぶないからね~」
「いえ、私共の原発は絶対安全でございます。かくかくしかじか…」
返事をしないまま、一時間が過ぎた。
「う~む、う~む…」
「…では、きょうはこの辺でおいとまいたします」
明くる日も電力さんはやってきた。
「二億円でいかがでしょうか」
返事をしないまま、一時間が過ぎた。
「う~む、うむ、うむ…」
「…では、きょうはこの辺でおいとまいたします」
明くる日、電力さんは三億円を提示した。
「うむむむむ〜…」
この日もワタシは、ただうなるばかりだった。
十日目。
この日電力さんは、副社長が数人のお伴を従えて黒塗りの高級車で乗り付けてきた。
しかも、お伴の者たちに十億円のキャッシュが入ったカバンを抱えさせて。
お伴の一人が、古道具屋で買ってきた古びた座卓の上に札束を次々に積み上げた。
副社長は、正座して微動だにせず、無言でワタシの目をじっと見続けている。
十億円の札束を乗せた古座卓は、札束の重みでみしみしときしんだ。
副社長は座布団を背後に引き、畳の上にひれ伏した。
「あなたさまのご決断にこの地域の、いえ、この国の命運がかかっております。なにとぞご了承くださいませっ」
勝負を賭けてきたな。
ワタシは軽く咳払いをすると、おもむろに口を開いた。
「この土地は、売りません」
「…な、なぜですか、十億円でも足りないとっ」
「ワタシは、ゲンパツなどいらないし、そんな大金もいらないのです。これまでも、これからも。…ゲンパツがなくても、十億円がなくても、ワタシは十分幸せです。これまでも、これからも。そして、人々にそんなものが必要だとは、どうしても思えないのです。ゲンパツなどは、歴史の墓穴の中に今すぐ葬り去っていただきたいのです」
「そ、それなら、なぜきょうまで返事を引き延ばしてきたんだよっ、この野郎っ」
「『わたしたち』の思いの強さを示し、理解していただくためです。事実、あなた方は始めから十億円出さずに、小出しにしてきたではありませんか。そしてあなた方は『わたしたち』の思いの強さを、とうとう最後までまったく理解しなかった」
「『わたしたち』って、あんたと奥方のことかよっ」
「ちがいます。ここにはおられないが、お金には換えられない価値を知るすべての人のことです」
…言ってみたい。
ううっ、一度でいいからこんな風に言ってみたいよ。
快感だろうなー。
電力さん、ぜひ来てください。
十億円を蹴る快感を味わわせてください。
ざまーみろって感じだ。
金じゃねーよ、このやろー。
ところで、下北半島の最北端、つまり本州の最北端に建設中の大間原発。
その炉心の予定地だった土地の地主さんは、今でも建設に反対して、地域ではただ一軒立ち退いていない。
結局、炉心予定地は数百メートル離れた所に設定され、工事は始められた。
が、ある日、一人で反対し続け数億円の立退料にも首を縦に振らなかったこの家の女主人さんは、不幸にも不慮の死を遂げてしまわれた。
そこで電力会社は、ご子息たちに十億円をちらつかせて遺産相続でのトラブルをねらった。
が、ご子息たちはお母様の遺志を受け継いで受取を拒否し、今も立ち退いておられない。
村八分にされ、脅迫・いやがらせを受け続け、それでも「海に生かされてきた」との先祖代々の漁師の心を守り続けておられる。
下北半島が、その厳しすぎる自然によって、ほんの五十年前までいかに苛酷な暮らしを強いられてきたか。
温暖な土地で暮らす者にはけっしてわからない。
それが、政治のお蔭で少しずつ暮らしが上向いてきた。
大間原発、そして同じく下北半島に位置する東通原発、六ヶ所村再処理工場、むつの使用済核燃料中間貯蔵施設の問題は、この文脈で考えられるべきだ。
誰しも人並みの暮らしがしたいと願うのは当然だ。
また、この国の政治が地方に手厚かった時期があったことは確かだ。
が、一度手放してしまえば二度と還らないものがふたつあると、ワタシは思う。
それは、自然と人の心だ。
手放したときには、人は自身の未来にバイバイしているのだ。
自然と人の心は、しっかりと一体になっているときには何よりも強い。
が、別々にあるときには、あまりにも繊細でか弱い。
自然と人の心を金の力で分断し、か弱さだけをあらわにしてしまった人の心、人の弱みにつけ込むのが、奴らの常套手段なのだ。
ウチの地所をたくさんの人が働ける施設か農地にするから一億で売ってくれということだったら、もう今すぐにでも売るんだけどなー。
が、これっぽっちの荒れ地ではありえなくてそれはそれはよかった。
おしまい。
11.10.13 記
11.10.13 記
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太 陽 暦
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管理人について
HN:
巴だ リョウヘイ
性別:
非公開
職業:
揚琴・笛演奏屋 オカリナのセンセイ
趣味:
ほしい。
自己紹介:
演奏活動範囲/全国の都心から山間地まで。
演奏場所/ホールからお座敷まで。オカリナは野外歓迎。
演奏目的/オープニングセレモニーから追悼演奏まで。
演奏形態/独奏から異業種間共演まで。
所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)
コンタクト方法/上記のホームページ(HP)の「FAQ & Form」のページからどうぞ。
特 技/晴れ男であること。
オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。
2018年、京都府下農村から大阪府下住宅街に移住。
今も雨乞い師見習い。
今も自然農見習い。
ノアのおとうちゃん。
演奏活動範囲/全国の都心から山間地まで。
演奏場所/ホールからお座敷まで。オカリナは野外歓迎。
演奏目的/オープニングセレモニーから追悼演奏まで。
演奏形態/独奏から異業種間共演まで。
所属事務所/Magnolia Music(自分的オフィス)
コンタクト方法/上記のホームページ(HP)の「FAQ & Form」のページからどうぞ。
特 技/晴れ男であること。
オカリナ倶楽部 “夢見るガチョウ” 主宰。
2018年、京都府下農村から大阪府下住宅街に移住。
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今も自然農見習い。
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