#137 二度の偶然はない

#137　二度の偶然はない

　ずいぶん暑い日となった9月9日、京都・浄土院での「揚琴演奏的生活20周年感謝的自主コンサート」が終わりました。ワタシの願いであったこのコンサート開催を、浄土院さん、ご来場いただいたみなさま、同居のよく知ったご婦人始め多くの方に叶えていただいた幸せな日となったことを改めて感謝いたしております。うれしい再会もありました。この日にいてほしい人が、そこにいました。
　そんなわけで、思いがけずおおごとになってしまいましたが、いみじくもコンサートの最後に口から発してしまった「過去よりも未来よりも、現在を大切にしたいと思います」は、ワタシの本当の願いだったと思うのです。

　では、いつもの調子で。

　最後の曲は「波紋」だった。水の神の化身である龍を呼ぶ祈りの曲でもある。「波紋」のためにチューニングをしているとき、突然大きな雨音が聞こえ始めた。それは、焼けた大地を潤わす慈雨であり、「波紋」の最高のイントロダクションであった。

　そのときワタシは、2005年9月10日、高槻の伊勢寺でのコンサートを思い出した。この「萩待宵コンサート」での最後の曲も、やはり波紋だった。その第一音を放つべくバチを振り上げたそのとき、突如稲妻が光り、太い雷鳴が轟いた。ワタシは弦を打たず、そのままの体勢で雷鳴が静まるのを待った。それは、何もかもが満たされた、充溢した間だった。

　浄土院から帰宅後、どなたの紹介か、全日本祈祷師協会から入会の誘いが来た。

「あなたには雨乞いの力があります。ぜひ当会に」
「あれはすべて偶然です」
「いいえ、あなたが気がついておられないだけで、あなたには雨乞い師の能力が具わってます。ぜひ当会に」
「まだ半信半疑ですが。ちなみに、入会後はどのような」
「一年間の基礎研修期間ののち、一年間の実習を経て、現場で見習いを三年間、そして独立していただけます」
「ずいぶん長い道のりですが、収益の見込みは」
「ご心配には及びません。独立後の会員様には当会が仕事を斡旋させていただきます。あなたの収益のうち、年間わずか10％を当会に納めていただくだけで、会員資格は継続します。失礼ですが、現状の演奏稼業よりは潤われることを保障いたします。すでに多くの方が成功を修めておられます（「祈祷師として歩み始めた人の喜びの声」という顔写真入りパンフを見せる）」
「・・・なるほど、ワタシでもできそうですね」
「はい。では、この入会願いの書類に署名押印して、入会金100万円をお納めください」

　9月9日のコンサートを聴きにきてくださっていたＳさんは、前述の伊勢寺でのコンサートを主催していただいたグループのひとりだ。Ｓさんがこの日の波紋のときの突然の雨に接して曰く「二度の偶然はない」とのことだったが、雨乞い師を目指すかどうかは、自分の将来のことだから、慎重に検討して結論を出したいと思う。

　つづく。　

この日の演奏風景

2007/09/11 (Tue) 揚琴演奏的生活 TRACKBACK() COMMENT(0)