#731 用務員的創造性

#731　用務員的創造性

　目の前に並んだ何皿ものごちそう。さて、どれから手をつけるか。それは人それぞれだとも。で、手をつける順序にその人の性格が表れるという。いちばん好きなものから食べる人はああだこうだと。んでは、目の前にやるべきことがゴマンとある我らの日常。常にいちばんやりたいことから手をつけるとどうなるか。たぶん万歳だ。破滅だ。

「いちばん好きなものから順に食べると、二番目に好きなものは残ったものの中のいちばん好きなものになる。だから、最後までいちばん好きなものを食べることができる」
　幸せな人だ。
　この逆はと言えば、最後までいちばん嫌いなものを食べることになるかと言えば、もちろんそうとは言えない。で、こんなことをまじめに考えるヒマがあったら、他のやりたいことをやれと言いたい。

　で、日常生活で、常にいちばんやりたいことから手をつけるとどうなるか。やりたいことの多くは、食べ物の皿と違ってすぐには空にならない。もしかすると一生つづくやも知れない。が、寝食を忘れて没頭できるのもせいぜい数日だ。続けるためには食わねばならない。が、それがどこでどう間違ったのか、「食っていかねばならない」「食わさねばねばならない」とねばねば言い出す。
　で、とうとう、食って何をするかだったはずが、食っていくことが大義名分になってしまう。やりたいことは、ただの誘惑に成り果ててしまう。

「劣後順位」というものがあるそうだ。すなわち、やってはいけない仕事を明確にすることだという。やるべきことを明確にする優先順位の逆だな。経営者はコピーや集金といった雑用に手をつけてはいかん、過去の問題に関わることばかりやっておってはいかん、経営者たるもの創造性にあふれ未来志向であらねばねばならぬと、ドラッガー、じゃなくてドラッカーという学者が言ったそうな。
　大きなお世話だよ。おれだって一応経営者だけど、コピー集金言うに及ばず、書類整理から運転から掃除から草刈りまでなんでもしてるぞ。だって、ほかに社員がいないんだからしょうがねーじゃねーかっ。社長兼用務員だっ。悪かったなっ。
　だいたい、すべてを「やるべきこと」と「やるべきでないこと」という括りだけに納めさせようとするのは、文部科学省別室の陰謀にちがいない。

　ん、創造性ってのは、本当にやりたいことの中にあるのとちがうか。

　だから、つまり、社長ではあるものの、用務員でもあるものの、せいぜいいちばんやりたいことからやるようにしてるってわけで、やりたいことをできていればそれはよかったと言いたいが、そうはいかんのが人の世の常で、てことはここも人の世のはしくれだったってわけで、それはそれはよかった。って、何がどうなってるんだ。

　おしまい。　
11.02.07 記　

ちょうど一年前。今年の当地は雪が無い節分、立春だった。

2011/02/08 (Tue) 雑　感 TRACKBACK() COMMENT(0)